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【日本茶の時間】静岡の「天空の茶産地」で手摘み製茶見学(1)

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  • 国内
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  • > 静岡県
> 川根本町
【日本茶の時間】静岡の「天空の茶産地」で手摘み製茶見学(1)

高級煎茶として知られる静岡県の川根茶。4月下旬、SATOMI製茶では茶の初摘みが行われ、浅蒸し煎茶は町内初取り引きで最高値を付けた

 

川根の「山のお茶」茶摘み見学

“茶畑列車”と呼べるほど、静岡県島田市と川根本町を走る大井川鐵道は、車窓に渓谷の茶畑が連続する。蒸気機関車が運行することでも知られるローカル線だ。

沿線なかほどの下泉(しもいずみ)駅と対面する山肌に「SATOMI製茶」はある。栽培から製造まで行う茶農家だ。金谷駅から車で約45分。大井川を見下ろす標高約250メートルの南向き斜面に、茶樹(ちゃじゅ)の段々畑が広がる。

新芽とその下の2枚の葉を一芯二葉(いっしんによう)という
先端の一芯二葉だけを手摘みする

4月下旬、新茶の初摘みが行われた。雨が少し続き、その後2日ほど晴れた日に、4代続く茶農家の高木郷美(さとみ)さんは茶摘みを開始した。「茶が根から水分をぐっと吸い上げて、新芽が潤っている今が茶摘みのタイミング」と話す。摘むのは「一芯二葉」といわれる軟らかい新芽。黄緑の葉色がみずみずしく輝いている。

”みる芽”を手摘みする川根っこ

手摘みは20人ほどで朝から夕刻まで一気に行われた。軟らかい新芽のことを静岡県の方言で「みるい芽(みる芽)」と言うそうだ。「みるいから、摘むにはコツがいる」と女性陣。全員が地元在住で、多くがベテランだ。最年長は82歳の竹花ヤヨイさんで「幼少期から茶摘みが大好き」とほほ笑む。毎食時の川根茶は欠かせないと話し、風邪知らずだそうで、美肌の持ち主だ。

被覆による一時的な日光遮断によって葉色は淡い黄緑色。旨みが増す

日差しは強いが、川から強い風が絶えず吹いている。雨がほどよく多く、朝霧がよく立つ地域。その潤いがおいしさの秘密とか。暖かくても夜は冷え込む山あいに育つ川根茶は「山のお茶」と親しまれる。江戸時代から知られた歴史ある茶産地だ。

「川根は農家の住まいのすぐそばに茶畑がある」と高木さん。茶樹や天候を毎日チェックしながら、見守り育て、初摘みを迎える。今年の出来もいいと言う。

SATOMI製茶は大井川鐵道下泉駅の対岸

手摘みする茶樹は新芽の生育期に一定期間、寒冷紗(かんれいしゃ)という黒い人工布で被覆し日光を遮断する。そうすると旨みを作るアミノ酸のテアニンが残り、渋みのカテキンが抑えられ、旨み濃厚な上質な味わいの茶ができる。

さて、そのお味とは……

【日本茶の時間】静岡の「天空の茶産地」で手摘み製茶見学(2)へ続く

 

(出典「旅行読売」2022年7月号)

(ウェブ掲載2022年7月5日)


Writer

のかたあきこ さん

旅ジャーナリスト。町、人、温泉、宿をテーマに30年間、全国取材。テレビ東京『ソロモン流』で旅賢人と紹介される。宿本・旅美人SPECIAL編集長、温泉ソムリエアンバサダー、睡眠健康指導士、傾聴スペシャリスト、サウナ・スパプロフェッショナル、日本茶検定1級、日本茶インストラクター、福岡県出身(福岡検定・中級)。2024年5月に書籍『手わざの日本旅 星野リゾート温泉旅館「界」の楽しみ方』(旅行読売出版社)を発刊。

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