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【文化財の宿】渋温泉 歴史の宿 金具屋(2)

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 長野県
> 山ノ内町
【文化財の宿】渋温泉 歴史の宿 金具屋(2)

大広間の見どころは折上格天井。格子の内側に組み入れた井桁は、1950年の再建時の工夫

 

宮大工の遊び心が息づく建築を案内人と巡る

【文化財の宿】渋温泉 歴史の宿 金具屋(1)より続く

17時30分。ひと風呂浴びて浴衣姿となった人々が、大広間に集まってくる。「金具屋文化財巡り」と題された宿泊者向けの館内ツアー(無料、所要35分)が始まるのだ。この大広間、柱なしで130畳の広さがある。ガイドを務める西山さんによれば、「天井で見えませんが、トラス構造という西洋の建築技術が用いられています」。和洋の文化と技術が融合して生まれたことを知れば、大空間の見え方も変わってくる。

大広間のある宴会棟と斉月楼の建設は、昭和初期の湯田中駅までの鉄道延伸が契機となった。「これからは観光旅館の時代だ! と考えた曾祖父が、最高級の旅館を作ろうとしたんです」と西山さん。6代目は宮大工を引き連れ、全国各地の観光地で旅館や寺社を見て回った。その情熱が実を結び、金具屋は湯治宿から観光旅館への転身を果たしたのだ。

館内ツアーは大広間を出て、斉月楼の4階から1階へと順に下りていく。「ここにも水車の廃材が使われています」「庇(ひさし)の上になぜかアワビの殻が載っているんですね」などと解説を聞きながら見て歩くと、楽しんで造られた建物であることが伝わってくる。金具屋260年の歴史と、昭和初期の熱気に触れるような体験となった。

西山さんが案内する「金具屋文化財巡り」。チェックイン時に予約する
(左上)飾り窓に番傘が描かれ、庇の上にはアワビの殻(右上)斉月楼の鬼瓦には「加」の字(左下)金具屋の家紋「丸に三つ柏(かしわ)」も意匠の一部(右下)至る所で水車の廃材がアクセントに

大広間で味わう信州の食材を盛り込んだ料理

夕食は、先ほど折上格天井(おりあげごうてんじょう)に見惚(ほ)れたばかりの大広間にて。メインは地鶏にそば粉をまぶして煮た「しぶのじぶ煮」。昆布締めの信州サーモンやきのこの揚げ出汁椀(だしわん)など、信州の食材を盛り込んだ品が並ぶ。「不老膳」のコンセプトで体を健(すこ)やかにしてくれそうだ。

文/内山沙希子 写真/斎藤雄輝

【文化財の宿】渋温泉 歴史の宿 金具屋(3)へ続く


斉月楼1階の廊下。斉月楼の館内は、廊下を小路に、客室を家に見立てた造り

渋温泉 歴史の宿 金具屋

住所:長野県山ノ内町平穏2202

交通:長野電鉄湯田中駅からバス10分、渋温泉または渋和合橋下車徒歩2分。湯田中駅から送迎あり(15時12分~18時5分到着のみ。要連絡)/上信越道信州中野ICから13㌔

客室:バス・トイレ付き10 畳和室など(全29 室)

料金:1泊2食1万8850円~(※2人1室利用時。掲載時の料金。最新のデータはホームページなどでご確認ください)

TEL:0269-33-3131

(出典:「旅行読売」2022年6月号)

(WEB掲載:2022年10月18日)


Writer

内山沙希子 さん

京都生まれ。本や雑誌を作る仕事を求め、大学在学中に上京。その後、美術館やレストラン、温泉宿、花名所、紅葉名所等のガイドブックを中心に、雑誌や書籍の企画・編集に携わる。2017年頃から月刊「旅行読売」で原稿の執筆を開始。「旅行読売」での取材を通して、鉄道旅に目覚めるかどうかは未知数。

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