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北海道の鉄道の記憶をとどめる廃駅巡り

場所
> 岩見沢市 三笠市
北海道の鉄道の記憶をとどめる廃駅巡り

幌内線を走る国鉄9600形蒸気機関車(写真提供/三笠鉄道記念館)

 

地域住民が守り伝える鉄道の歴史

北海道では、本州で東海道新幹線が開業した1964年に約4000kmあった線路が、今では約2400kmにまで減った。当然、駅の数も大きく減っている。廃止された駅の多くは取り壊され、もう注目されることもない。しかし、開拓と発展を支えたその姿を忘れてほしくないと、地元の人々が守り伝える古い駅舎がある。岩見沢市、三笠市などを中心とする空知エリアで出合った三つの駅を紹介する。

1987年に廃駅となった幌内線幌内駅(1970年撮影、写真提供/三笠鉄道記念館)

忘れ去られていた駅舎が輝きを取り戻した

三笠市の旧唐松(とうまつ)駅は、幌内線全線開業から47年後の1929年に開業。炭鉱とゆかりの深い駅で、近隣で操業していた住友炭礦(たんこう)請願により設けられた。当初の待合室は9坪しかなく、入りきれない乗客は、時には風雪にさらされて屋外で待ったという。

幌内線廃止後、朽ち果てそうになっていた駅舎を有志が修繕し整備した。駅舎内に貼られた古い写真からは、往時の様子が見てとれる。改札を抜けるとホームもまだ残っていて、昔のにぎわいが背中から迫ってくるような錯覚に包まれた。

旧唐松駅の駅舎は、将棋の駒の形に似た「ギャンブレル屋根」が特徴
駅舎内には古い写真や資料が多く展示されている

「ライダーハウス」として復活した旧萱野駅

同じく三笠市内の旧萱野駅も幌内線の駅として1913年に開業。こちらも鉄道廃止後は荒れ果てていたが、萱野連合町内会が中心となり2001年に「ライダーハウス旧萱野駅」として再生された。宿泊料金は1泊1000円。冷蔵庫やコンロがあり自炊もできる。洗濯機やシャワー室もある。

居間に置かれた書き込みノートをめくると、「大雨で足止めされたけど助かった」「また帰ってきます!」「冷蔵庫に食材を置いていきます。次の方どうぞ」など、心温まる書き込みで埋まっていた。

誰でも気軽に泊まれるライダーハウスに役目を変えた旧萱野駅
待合室は昔の雰囲気を残して居間に改修
寝室は事務室を改修。1泊1000円で雨風をしのげると重宝されている

旧朝日駅は廃駅とは思えない爽やかなたたずまい

岩見沢市の万字線鉄道公園は、1985年の万字線廃線とともに廃止された旧朝日駅の跡を翌年から公園として供用。万字線は志文駅で室蘭線から分岐し、万字炭山駅までの23.8kmを結んでいた。


引き戸や窓枠の鮮やかな水色が北海道の澄んだ空とマッチして美しい。窓を開けると爽やかな風が吹き抜ける。役目を終えたモノは姿を消すのが世の常ではあるが、歴史の証人として残るモノもある。鉄道が重ねてきた歴史を、しみじみと感じる旅となった。

文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝

水色の窓枠が爽やかな旧朝日駅
駅舎内には荷受け票など、当時の生活を伝えるものがそのまま残されている

旧唐松駅:見学自由/TEL:0126-72-3186(三笠市税務財政課)

旧萱野駅:外観見学自由/TEL:0126-72-3186( 三笠市税務財政課)、宿泊に関してはTEL:0126-72-7497(坂梨〈個人〉) 

万字線鉄道公園:見学自由/TEL:0126-35-4674(岩見沢市公園緑地環境課)


(出典:「旅行読売」
2022年10月号)

(WEB掲載:2022年9月26日)


Writer

渡辺貴由 さん

栃木県栃木市生まれ。旅行情報誌制作に30年近く携わり、全国各地を取材。現在、月刊「旅行読売」編集部副編集長。プライベートではスケジュールに従った「旅行」より、行き当たりばったりの「旅」が好き。温泉が好きだが、硫黄泉が苦手なのが玉に瑕(きず)。自宅では愛犬チワワに癒やされる日々。

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