【鉄道開業150年】東京駅を歩く(1)
行幸通りから見る東京駅丸の内駅舎。左の北ドーム側に東京ステーションギャラリー、右の南ドーム側に東京ステーションホテルが入る
復原10周年の東京駅丸の内駅舎のドーム
東京駅丸の内駅舎が復原された10年前、レンガ造りの3階建て駅舎の復活は話題を呼び、弊誌もよく取り上げて取材で歩いた。「近代建築の父」辰野金吾(たつのきんご)の代表作であり、「日本のセントラルステーション」である東京駅は、令和になった今も堂々たる姿を見せている。鉄道開業150年の今年、変わらない駅と、変わり続ける駅周辺・構内をもう一度歩いた。
丸の内南口で工学院大学建築学部の大内田史郎教授と待ち合わせ、案内してもらった。JR職員時代に復原計画に参加し、大内田さんの書いた論文が復原の基礎資料になり、その後、大学で教職に就くという異色の経歴を持つ。
久しぶりに復原ドームを見上げた。八角形の方角を表す十二支の動物ほか、鳳凰(ほうおう)や鷲(わし)、秀吉の兜(かぶと)などの精巧なレリーフが見える。戦災後の2階建ての時代には失われていた意匠だ。駅外観の資料が揃(そろ)っていた一方で、「ドーム内の資料は写真数枚と図面1枚だけしかなく、当時の建築雑誌を調べたり、辰野氏設計のレンガ建築(旧盛岡銀行本店、旧日本銀行京都支店、旧日本生命九州支店)などを見に行ったりして、詳細を詰めていきました」と大内田さん。
赤レンガに刻まれた東京駅の歴史
南口から駅正面を通って北口へ向かう。粘板岩(ねんばんがん)を薄く加工した天然スレート葺(ぶ)きの屋根が陽光を鈍く跳ね返す。駅前広場の木陰をつくるケヤキ並木の先に、皇居の緑まで行幸(ぎょうこう)通りが延びている。
赤い化粧レンガの上に、白い花崗岩(かこうがん)と擬石(ぎせき)が縦横の模様を作る重厚な姿は「辰野式」とも呼ばれる。鉄骨レンガ造りの建物は堅固で、レンガ造りの建物が数多く倒壊した1923年の関東大震災にも難なく耐えた。
よく見ると2階と3階の間を境にレンガの色が違う。戦災復興工事で撤去された3階が復原部分で、1・2階は1914年の竣工時と終戦後の修復時の現存部分。大内田さんは「3階はあえてエイジング加工をしていないので境界がはっきりしています。築10 年の3階と築約110年の1・2階が、これから時を経て、なじんでいくはずです」と未来について話す。
丸の内駅舎の内部の構造レンガを見られる、北口の東京ステーションギャラリーにも寄りたい。
文/福﨑圭介 写真/青谷 慶
10 時~ 17 時30 分(金曜は~ 19 時30 分)/月曜(祝日の場合は翌平日)休、展示替え期間
休/1400円(展覧会により異なる) / TEL03・3212・2485 ※掲載時の料金、時間です。
(出典:「旅行読売」2022年10月号)
(WEB掲載:2022年10月29日)