【東京さんぽ】東京国立博物館創立150周年 上野恩賜公園(台東区)を歩く
東京国立博物館の本館を大噴水(噴水池)越しに見る。現在の本館は昭和天皇の即位を記念して建てられたもので、重要文化財に指定されている
生まれ変わった上野駅公園口 広い「トーハク」を歩き、発見に出合う
春の気配が漂い始めた3月上旬、上野恩賜公園に足を運んだ。上野を歩くのは実に久しぶりだ。
上野駅を出てまず目をみはったのが、公園口とその周辺の変わりようだ。公園口駅舎は、展望テラスのあるしゃれた建物に変貌。駅舎前の道路は駅舎の正面部分が公園と一体化した歩道に整備され、分断された道路は駅舎の左右でそれぞれロータリー化されていた。
上野恩賜公園は、動物園、美術館、博物館などが集中する文化エリア。いずれも魅力的な施設ばかりだが、この日は「トーハク(東博)」こと、今年で創立150年となる東京国立博物館を主たる目的地に選んだ。今回の上野訪問は「さんぽ」特集の一環だが、東博の敷地面積は約12万平方メートル、展示面積は約1万8200平方メートル。歴史と収蔵量を誇るだけでなく、歩きがいもある施設なのだ。
資料によれば、1872(明治5)年3月10日、湯島聖堂大成殿(たいせいでん)を会場に日本最初の博覧会が開かれ、文化財、標本など600件余が陳列された。大盛況で、会期は4月末まで延び、多くの入場者でにぎわった。東博では、この博覧
会の開催をもって創立・開館としている。その時の陳列風景を描いた「古今珎物集覧(ここんちんぶつしゅうらん)」は、創立150 年を記念する10月~12月の特別展で展示される予定だ。
「東博の収蔵品は、国宝89件を含む約12万件。総合文化展(常設展)では、毎週のように入れ替えを行い、常に約3000件を展示しています。いつ来ても新しい発見があると思いますよ」と話すのは、広報室の担当者。じっくり見るなら、まる1日かけても見尽くすのは難しそうだ。
地域ごとの仏像の差異を知る
東博は、本館(日本ギャラリー)、平成館(考古展示室・特別展示専用展示室)、東洋館(アジアギャラリー)、法隆寺宝物館、表慶館(特別展などを行う)、黒田記念館(洋画家・黒田清輝の作品展示)、庭園などで構成されている。私は東洋館から見学することにした。
1階で中国の仏像、2階でインド・ガンダーラの彫刻などを見学。3階では中国の青銅器や陶磁器、4階では中国の書跡、5階では朝鮮半島の考古資料や仏教美術品などを鑑賞した。仏教がインドから東アジアへ伝わるにつれ、仏像の容貌、雰囲気が変化していくのが興味深い。その違いを一つの施設で比較できるのは貴重だ。
東洋館を見るだけで約2時間。各所に休憩スペースが設けられているのはうれしいが、お腹もすいてきたので、「ホテルオークラレストラン ゆりの木」で休憩を兼ねて昼食をとった。
腹ごしらえの後は本館を参観。2階は、縄文時代から江戸時代まで、時代を追って日本美術の流れを紹介する展示。ジャル別の展示を行っている1階では、仏像や漆工作品、刀剣などを鑑賞した。
一つ、うれしい出来事があった。青森県つがる市出土の遮光器土偶に出合えたことだ。以前、同県津軽地方で勤務してい
た際に、地元で「しゃこちゃん」と呼ばれ、愛されているこの土偶の存在を知った。しかし、地元にあるのはレプリカのみ。いつか本物を見たいと思っていたので、対面できた喜びはひとしおだ。
庭園や法隆寺宝物館なども見学。計4時間ほど滞在しただろうか。「よく歩いたな」と思いつつ、東博から不忍池(しのばずのいけ)方面に向かった。
不忍池辯天(べんてん)堂で参拝した後、1917(大正6)年4月27日~29日に行われた日本初の駅伝(京都・三条大橋スタート)のゴールが不忍池であったことを記念する「駅伝の碑」を見て、上野駅へ戻った。
公園口にある国立西洋美術館は、4月9日にリニューアルオープン。次は、近代建築の巨匠ル・コルビュジエ設計の本館が世界文化遺産に登録されている同館を訪れ、西洋美術にも触れてみたい。
【モデルコース】
徒歩時間:30分
上野駅(公園口)ー徒歩10分→東京国立博物館ー徒歩10分→不忍池辯天堂ー徒歩2分→駅伝の碑ー徒歩8分→上野駅(不忍口)
【施設データ】
上野恩賜公園 入園自由(23時~翌5時は立ち入り禁止)/TEL:03-3828-5644(公園管理事務所)
東京国立博物館(総合文化展) 9時30分~16時30分/月曜(祝日の場合は翌平日)休、年末年始休、臨時休あり/1000円/TEL:050-5541-8600
ホテルオークラレストラン ゆりの木(東洋館)11時~16時20分/休みは東京国立博物館に準じる/TEL:03-5685-5125
ミュージアムショップ(本館) 営業時間、休みは東京国立博物館に準じる/TEL:03-3822-0088(東京国立博物館協力会)
不忍池辯天堂 9時~16時(開堂)/無休/無料/TEL:03-3821-4638
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(出典:「旅行読売」2022年5月号)
(WEB掲載:2022年6月12日)