【47都道府県の秋絶景】新湊漁港の昼セリ
セリ人と仲買人たちが集まり、セリの開始を待つ新湊漁港のセリ場
とれたてのカニの赤いじゅうたん
「天然のいけす」と呼ばれ、新鮮な魚介類が豊富にとれる富山湾。毎年9月1日にベニズワイガニ漁が解禁になり、秋の訪れを告げる。県西部にある新湊漁港は、とれる魚種や漁獲量が多く、ベニズワイガニ漁も盛ん。5月末までのベニズワイガニ漁のシーズン中は、セリ場2階の見学通路から、昼セリを見学できる。
港に面したセリ場では、漁師たちが大きさで選別しながら手早くカニを並べていく。ベニズワイガニは生の状態でも赤いので、セリ場の床には鮮やかな色のじゅうたんを敷いたよう。整然とカニが並ぶ様は壮観だ。
見学に訪れた日は、天候の影響で1隻だけが出航したそう。そのため漁獲量は680匹と少なかったが、大きさはまずまずのようだ。富山県では、県産のベニズワイガニを「高志(こし)の紅(あか)ガニ」と名付け、ブランド化を進めている。その中でも、重さ約1キロ以上、甲羅の幅14センチ以上のものを「極上 高志の紅ガニ」と認定し、この日は2匹が認定された。
新湊きっときと市場でゆでたてのカニにかぶりつく
12時30分に始まったセリは、みるみる進んでいく。素人にはまったく聞き取れないが、独特の掛け声や仲買人のサインなど、セリならではの雰囲気が近くで感じられて面白い。
市場関係者が「新湊のカニは、なんといっても鮮度がいい。朝とって昼にセリにかけているところは珍しい」と教えてくれた。ベニズワイガニが生息する水深800メートル以上の漁場まで岸から20キロ~30キロと近く、朝水揚げされたカニが昼セリにかけられ、その日のうちに食卓に上るのだ。
セリが終わると、カニは急いでかごに入れて運び出され、にぎわっていたセリ場から、あっという間にカニも人もいなくなる。自分もカニを追いかけて、徒歩5分の新湊きっときと市場へ。「海鮮問屋 魚新(うおしん)」では茹(ゆ)でたカニを販売し、その場で食べられる。屋外の大釜で茹で上がったばかりのカニを買い、館内のイートインスペースでさっそく味わう。身は甘く、みずみずしい。カニミソもうま味が強く、残らず平らげた。せり落とされてから口に入るまで、わずか1時間少々。こんなとれたて茹でたてのカニを食べたのは初めてだ。
内川の橋巡りや海王丸など周辺観光も
カニを堪能した後は周辺を散策しよう。新湊を東西に流れる内川は、民家が立ち並ぶ両岸に漁船が連なって係留されている。どこかノスタルジックな風情を感じる港町だ。全長3.5キロの内川には、造りやデザインの異なる橋が10本以上架かっている。「内川遊覧&12橋巡り」の観光船で、帆船海王丸が係留されている海王丸パークへ行くのもおすすめ。
練習帆船として活躍した初代海王丸は1930年の建造で、船内が公開されている。普段はたたまれているすべての帆を広げる総帆展帆(そうはんてんぱん)も、年10回ほど行われている。
文/出口由紀 写真/齋藤雄輝
住所:富山県射水市海王町1(新湊きっときっと市場)
営業:12時30分~商品がなくなり次第終了/水・日曜休/見学料100円(見学は要予約、市場自体は9時~17時※時期により異なる、無休)
交通:万葉線東新湊駅から徒歩10分/北陸道小杉ICから12㌔
℡:0766-84-1233(新湊きっときっと市場)
(出典:「旅行読売」2022年11月号)
(WEB掲載:2022年12月28日)