【バリアフリーの温泉宿】なにわ一水 松江しんじ湖温泉
2016年に新装した「201」は、車イスに合わせて高さを調節できるテーブルなども備えたプレミアム客室
快適性と優美さを両立し、国際的な賞も受賞
「障がいがある人もない人もみんなで一緒に泊まれる温泉宿」として、2020年に国際的なユニバーサルデザインの表彰「IAUD国際デザイン賞2020」(一般財団法人国際ユニヴァーサルデザ
イン協議会主催)で金賞を受賞したのが、島根県松江市の「なにわ一水(いっすい)」だ。2010年に表彰が始まって以来、宿泊関連施設では初の受賞となった。
社長の勝谷有史(かつたにゆうじ)さんは、「〝温泉旅館の情緒〟と〝バリアフリー〟の両立がテーマです。使い勝手の良さはもちろん重要ですが、泊まってみたい魅力的な部屋がバリアフリーだった、というのが理想だと思っています」と話す。
自身も大の旅好きという勝谷社長のこだわりが詰まったバリアフリー客室を体感したいと、松江市へ向かった。
「なにわ一水」は、松江市街の宍道湖(しんじこ)のほとりに立つ。5階建ての館内は段差の少ないバリアフリー設計だ。チェックインは車イスでも利用しやすいテーブルで行うなど、サービス面でも誰もが使いやすいことへの配慮を感じる。
全23の客室はすべて湖に臨み、バリアフリー・ユニバーサルデザイン(以下UD)客室はそのうち7室ある。2021年12月に新装したばかりの5階特別フロア「水と雲の抄(しょう)」には、温泉の露天風呂や展望風呂を備えたバリアフリー・UD客室5室が並ぶ。
その一つの客室「水の6」は10畳和室+ハリウッドツイン、広さ約101平方メートルの和洋室だ。スライド式ドアを入ってフローリングの床を進むと、さっと視界が開けて窓の向こうに宍道湖が広がる。青い湖面と対岸の緑や町並み、そして刻々と表情を変える空や雲。「水の都」と称される松江市の叙情的な風景は、日常を忘れる優雅さだ。室内に段差はなく、トイレは車イスで回転できる広さだ。
5階のほかの4室はそれぞれに広さや展望風呂の形状、インテリアが異なる。バリアフリー・UD客室は2、3階にも各1室あり、「201」は露天風呂や座ったままシャワーが浴びられる「Theシャワー」も備える。「308」は温泉を給湯できるユニットバスが人気だ。
客室だけでなく、大浴場用の入浴リフトや車イス対応の送迎バス、聴覚障がい者用のフラッシュライトなど、設備や備品も充実している。
日本海の魚介類やしまね和牛など山陰の食材を使った夕食も楽しみ。家族とゆっくり大切な時間を過ごしたい宿だ。
松江市千鳥町63
TEL:0852-21-4132 / FAX:0852-21-4162
料金:5階展望風呂付和洋室「水の6」は1室2人利用の場合、1人1泊2食4万2000円〜、3人以上での利用の場合は同4万500円〜。2階「露天風呂付UD和洋室201号室」は1室2人利用の場合、1人1泊2食4万5000円〜、1室3人以上での利用の場合は同4万3500円〜。一般客室和室8畳は1室2人利用の場合、同1万9000円〜
客室:23(全室温水洗浄便座トイレ付き)
温泉:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉
風呂:内湯男女1、露天男女1
交通:山陰道松江西ICから国道9号、県道37号、国道431号経由6キロ/一畑電車北松江線松江しんじ湖温泉駅から送迎3分(要予約)
文/中元千恵子
(出典:「旅行読売」2022年8月号)
(WEB掲載:2023年1月30日)
※上記は雑誌掲載時のデータです。その後、変更になっている場合もありますので、ご確認のうえ、お出かけください。