【鉄道開業150年】100年駅舎の旅(1)
九州の玄関口にふさわしい門をイメージさせる意匠の門司港駅
日本の鉄道の歴史を体現する駅舎たち
全国には築100年を超える現役の駅舎が残っている。弊誌の連載「駅舎のある風景」が最終回を迎えた駅旅写真家の越さんに、日本の鉄道史とともに歩んできた“100年駅舎”(※数年後に築100年を超える駅舎も含む)を案内してもらった。
鉄道黎明(れいめい)期の明治時代、国が進める殖産興業政策のもと、日本ではターミナル駅を中心に西洋の技術を取り入れたレンガ造りの駅舎が建てられた。1874年開業の大阪駅や、1914年開業の東京駅もその流れを汲んでいる。ただ、2012年に復原工事を終えた東京駅も含め、残念ながら当時のまま残っているものはない。むしろ、現役の駅で往時の雰囲気を色濃く残しているのは、1903年築の肥薩線嘉例川(かれいがわ)駅だろう。
九州最古とも言われる油須原駅
明治期の鉄道は大きく2系統に分かれる。一つは官設鉄道として開業したもの、もう一つは民間資本によって開業し、1906年の鉄道国有法によって国有化された私設鉄道である。
前出の嘉例川駅は官設鉄道として早い時期に開業し、ほぼ当時のままの姿で残っている。瓦葺(かわらぶ)き木造平屋建て、切妻(きりづま)造りの屋根と焦茶(こげちゃ)色の下見板(したみいた)張りの駅舎は、昔にタイムスリップしたかと錯覚するようなたたずまいだ。
私設鉄道では、豊州(ほうしゅう)鉄道(現・平成筑豊鉄道)が1895年に開業した油須原(ゆすばる)駅が挙げられる。九州地方最古の駅舎とも言われ、下見板張りや漆喰(しっくい)の壁を補修するなど今年、復元改修を終えたばかり。
1944年に国有化された中国鉄道(現・津山線)も、この時期に開業した。1900年に地元の請願でできた建部(たけべ)駅は、花崗岩(かこうがん)の基礎に堅羽目板(かたはめいた)張りの腰壁が風格を漂わせている。
文・写真/越 信行