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【久住昌之さんが選ぶ 私の極上温泉】有馬温泉 ホテル花小宿(2)

場所
> 神戸市
【久住昌之さんが選ぶ 私の極上温泉】有馬温泉 ホテル花小宿(2)

この日のなますは、メイタガレイの刺し身や骨煎餅など

 

くすみ まさゆき

1958年、東京・三鷹生まれ。美學校・絵文字工房で赤瀬川原平に師事。1981年、泉晴紀と組んで「泉昌之」名でマンガ家デビュー。谷口ジローと組んで描いたマンガ『孤独のグルメ』は2012年にテレビドラマ化され、2022年10月からSeason10が放映中。エッセーは『東京都三多摩原人』(朝日新聞出版)ほか多数

 

目の前で調理した作り立てをいただく

【私の極上温泉】久住昌之さん ホテル花小宿(1)より続く

食事は宿併設の割烹「料膳旬重」で。カウンター越しに、調理人の包丁さばきや、素材を備長炭で焼く様子が眺められる。ご飯を炊く羽釜も目を引き、素材を焼く音や香ばしい匂いに食欲をそそられた。モットーは「淡い中に真の味がある」。素材の味を生かし、塩だけでもうまいという料理に興味が湧く。

料理は一品ずつ出され、肉厚でうまみ滴したたる焼きたての雲太椎茸や、牛乳から6時間かけて作る乳製品の「蘇」などが盛られた箸付けから始まる。明石浦漁港の昼網で仕入れ、生け簀で鮮度を保った瀬戸内海の魚介類を使った刺し身と炭火焼き、表面は香ばしく中は軟らかくほんのり甘い三田ポークの炭火焼きなどが目と舌を楽しませてくれた。肉はプラス5000円で月に10頭ほどしか出荷されないという希少な但馬牛「但馬玄」に変更できる。

明石浦産サワラの炭火焼きと笹巻麩
三田ポークの有馬焼き
海老芋饅頭きのこ餡掛け 

野に咲く花のような、さりげないもてなしに満ちた2日間

締めのご飯は、神戸大学の保田茂名誉教授が提唱した有機農法「保田ぼかし」により兵庫県神河町で育てた米を、羽釜で炊く。

「蓋は吹きこぼれないよう、太めで重く作っています。うまみを含んだ蒸気も逃しません」と料理長の松岡兼司さん。よくかんで味わえるよう少し硬めに炊かれていて、かむほどに米の甘みが広がった。

水物(デザート)まで7品の夕食は、なるほど食通の久住さんも大満足する内容と納得した。炭火焼きの旬魚や明石海苔、羽釜のご飯などの朝食も優しい味だった。

「花小宿」。小さな大人の宿での休日は、決して華やかではないけれど、野に咲く花のようなさりげないもてなしに満ちた、極上の2日間だった。

文/児島奈美 写真/宮川 透

朝食もカウンター越しの調理場で作る焼きたて・炊きたての料理を提供

ホテル花小宿

住所:兵庫県神戸市北区有馬町1007
℡:078-904-0281

料金:1泊2食平日2万5950円~、休前日3万50円~(1人1室は3万9350円~)※掲載時の料金
客室:9室
食事:夕食・朝食=食事処
泉質:含鉄-ナトリウム-塩化物泉
貸切:貸切内湯2
交通:神戸電鉄有馬線有馬温泉駅から徒歩7分/阪神高速7号北神戸線西宮山口南出入口から3キロ

 

(出典:「旅行読売」2022年11月号)

(Web掲載:2023年1月27日)

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Writer

児島奈美 さん

神戸生まれ。学生時代にバイクで北海道、九州、信州を巡って旅に目覚め、約40か国渡航。1か月のキャンプ旅でも太って帰ってくる食いしん坊で、現在は、旅・グルメ・人物インタビューを中心に、ガイドブックや雑誌、Webなどの制作に携わる。「旅行読売」ではルポがメイン。鉄子や歴女の道も着々と歩む。

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