【愛しの冬列車】ふたつ星4047で大村湾の絶景旅(2)
大村線千綿駅に停車中のふたつ星4047
凪の大村湾を見ながら行く至福の時間
【愛しの冬列車】ふたつ星4047で大村湾の絶景旅(1)より続く
長崎駅を出発したディーゼル列車は長崎線の長いトンネルを抜けると、諫早(いさはや)駅で15分ほど停車してから大村線に入り、北西方向へ。岩松駅を過ぎた辺り、左手間近に大村湾の絶景が広がる。この海はいつ見ても凪(な)いでいる。五島灘につながる佐世保湾以外は陸に囲まれていて外海の影響を受けづらく、湖のように静かだ。走る列車から見ていると、水面が鏡のように夕日を映して輝き、まぶしい。「長崎駅発が15時頃なのは、この夕景を見せたいから」と関係者に聞いた。車窓のハイライトの美景は諫早駅出発後から、ハウステンボス駅辺りまで1時間以上続く。
販売カウンターでは長崎市の洋菓子店「ママン・ガトー」の長崎スフレ(午後便のみ。午前便は特製弁当。要予約)や、雲仙市のアイスソルベ専門店「アール・サンク・ファミーユ」が作るアイスソルベ、列車専用茶畑で収穫した茶葉を使う「ふたつ星うれしの冷茶」などを販売。有料の波佐見(はさみ)焼転写体験(午後便)、佐賀海苔(のり)試食体験(午前便)もある。
何度も訪れたいノスタルジックな千綿駅
もう一つの見どころは、10分間停車する千綿駅。昭和初期築の木造建築の雰囲気を残しながら1993年に改装された駅舎のノスタルジックなたたずまいと、海がホームに迫るロケーションが人気で、停車中ほとんどの乗客が降りて、ホームや駅舎を撮影していた。
この無人駅が観光地化したため、数年前から地元の東彼杵(ひがしそのぎ)町は公募入札による事業者の誘致を行っており、今年5月には駅内に花屋のアトリエショップがオープンした。ふたつ星停車時はスタッフが出迎えることもあるという。この日は「くじら焼」の訪問販売があり、数分で完売。くじらの形をした小麦粉の衣につぶ餡(あん)を入れて焼き上げた新名物だ。小さな無人駅が町の観光拠点になるというのは面白い。
列車はハウステンボス駅、早岐(はいき)駅、有田駅に止まり、終点の武雄温泉駅に17時45分に到着。新しい新幹線と観光列車の旅を堪能した日帰り鉄道旅だった。もちろん、焼き物の町・有田や、名湯・武雄温泉、長崎でに泊まる旅もいい。有明海側の午前便など色々な組み合わせが考えられるが、ふたつ星は予約が取りづらい日もあるので、早めの計画がおすすめだ。
文/福﨑圭介 写真/森田公司
モデルコース◎日帰り
博多駅 8:54発
↓(鹿児島線・長崎線 特急リレーかもめ13号)
武雄温泉駅 9:57着 /10:00発
↓(西九州新幹線かもめ13号)
長崎駅 10:31着/14:53発
↓(ふたつ星4047)
千綿駅 16:20着/16:30発
↓(ふたつ星4047)
諫早駅 15:30着/15:45発
↓(ふたつ星4047)
有田駅 17:23着/17:25発
↓(ふたつ星4047)
武雄温泉駅 17:45着/17:50発
↓(ふたつ星4047)
博多駅 18:52着
※時刻は掲載時のものです。
グラバー園
長崎を代表する観光地。幕末の長崎開港後、外国人居留地となった場所に旧グラバー住宅、旧リンガー住宅、旧オルト住宅が残るほか、明治期の歴史的建造物6棟が移築されている。数年前から補修工事が順次進んでおり、旧グラバー住宅は昨年、展示などをリニューアルして公開された。自由亭喫茶室も休憩、食事におすすめ。
■8時~17時40分(時期により夜間開園あり)/無休/620円/長崎電気軌道大浦天主堂停留場から徒歩10分/☎095・822・8223 ※掲載時のデータです。
ふたつ星4047
運行区間:有明海コース(午前便)は武雄温泉―肥前浜―長崎
大村湾コース(午後便)は長崎―千綿―武雄温泉
運行日:金・土・日・月曜と祝日を中心に各ルート1日1本運行
料金:乗車券(武雄温泉→長崎は1850円、長崎→武雄温泉は2170円)+指定席特急券2330円
予約方法:指定席特急券は乗車日の1か月前からみどりの窓口、JR九州インターネット予約、JR西日本のe5489などで予約可能
西九州新幹線「かもめ」と「ふたつ星4047」を組み合わせる往復タイプの割引きっぷ。設定区間の「かもめ」および「ふたつ星4047」(在来線特急)の普通車指定席に、それぞれ1回乗車できる。博多―長崎駅9300円、佐賀―長崎駅8600円など。博多―長崎駅と佐賀―長崎駅の有効期間は3日。利用期間はホームページなどで確認を。■JR九州案内センター☎0570・04・1717(9時〜17時30分)
※いずれも掲載時のデータです。最新の情報は各ホームページをご確認ください。
(出典:「旅行読売」2023年1月号)
(Web掲載:2023年1月20日)