アジフライの聖地!?トラフグにブリ、サバ…長崎・秋の海鮮街道へ
アジフライの聖地を巡礼
新鮮な海の幸を求めて、長崎県北部へ。名づけて「海鮮街道」巡りだ。
まずは松浦市へ。トラフグや本マグロ、ブリなど高級魚の養殖が盛んで、とっておきの海の幸が待っている。福岡市内から車で1時間30分ほどで松浦市の中心部に入ると、「アジフライの聖地」と染め抜かれた青い幟(のぼり)が出迎えてくれる。松浦市はアジの水揚量が日本一。刺し身でも食べられる朝獲れのアジを、フライにしてしまう贅沢さ。外はサクッ、中はフワフワ。タルタルソースやウスターソースで味わう肉厚のアジフライは、魚フライの王様だ。
さっぱりとした脂のブリも人気だ。「道の駅松浦海のふるさと館」ではブリ丼定食を500円から提供。土日にはテイクアウトのブリ丼もある。味噌汁やブリ大根を作ってみたくなるブリのカマ「ブリ頭カット」も販売している。
旬に味わう天然サバ
アジフライやブリとともに人気なのが生のサバだ。ハーブ入りのエサを与えて養殖されたサバは、臭みがなく、一年中安定した品質とおいしさで提供される。
さらに、10月から2月にかけては、天然の「旬(とき)さば」がおすすめだ。釣られると船上ですぐに氷で締め、港へ戻る間に旨味を熟成させる。脂ののりも適度で、しゃぶしゃぶにするとさらに身が締まり、甘みが増す。松浦でもこの季節にしか味わえない旬の味。刺し身でも、塩焼きでも、煮付けでも、絶品だ。天然と養殖、松浦のサバの味を食べ比べても、面白い。
トラフグの養殖で有名な市内北部の鷹島(たかしま)では、養殖の本マグロが新たな名物になっている。「道の駅鷹ら島」では100キロ超のマグロも登場する「解体ショー」が人気の的だ。見事な解体の技を楽しんだ後は、急速冷凍された切り身を持ち帰れるのもうれしい。
ヒラメは平戸の代名詞
平戸市は松浦市の西隣り。こちらも忘れてはならない海鮮の町だ。古来、海外貿易の玄関口として栄えた平戸島の近海は、良質な漁場でもあった。その代名詞とも言えるのがヒラメ。他にもアラ(クエ)、イカ、ハタにエイ、シイラなど魚種は豊富だ。干物や練り物の名産品「川内かまぼこ」の原料になる、アゴ(トビウオ)も人気だ。
「『おいしか!』というひと言が、何よりうれしい」と語る平戸市漁協組合長の山中兵恵さん。平戸城の天守を間近に仰ぎ見る「旬鮮館」と、対岸から遠望する「平戸瀬戸市場」で、旬の味を探してみよう。
食のイベントに世界遺産……
11月からはアラ(クエ)、年が明けるとヒラメの季節だ。旬の味を、市内の飲食店や宿泊施設で楽しめる「天然あら鍋まつり」と「天然ひらめまつり」も、恒例イベントとして定着している。平戸観光協会が地元漁協と連携して実現した食の祭は、各地の同様のイベントの先がけにもなっている。
2018年7月、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として「平戸の聖地と集落」が世界文化遺産に登録された。美しい棚田が連なる春日集落はその一つ。人々の日々の営みが、美しい景観や自然の恵みにつながっている、そんなことを旅の最後に感じた。
<アクセス>
松浦市へのアクセス
電車/山陽新幹線博多駅から佐世保線有田駅で松浦鉄道に乗り換え、松浦駅下車
車/西九州道松浦IC
平戸市へのアクセス
電車/山陽新幹線博多駅から佐世保線有田駅または佐世保駅で松浦鉄道に乗り換え、たびら平戸口駅下車
車/西九州道松浦ICもしくは佐々IC
<問い合わせ>
まつうら観光物産協会/電話0956・76・8822
平戸観光協会/電話0950・23・8600
(出典 「旅行読売」2019年11月号)
(ウェブ掲載 2019年10月11日)