駅舎のある風景 深戸駅【長良川鉄道】
映画ロケにも使われた趣のある木造駅舎
長良川鉄道は、福井県のJR越美北(えつみほく)線とともに越美線として計画された路線で、現在は、岐阜県側で開通していた美濃太田(みのおおた)—北濃(ほくのう)駅間が越美南(えつみなん)線として運行している。
美濃白鳥(みのしろとり)駅から美濃市駅方面に向かうと、列車は左右車窓に見え隠れする長良川に沿って進む。途中、郡上八幡(ぐじょうはちまん)駅の近くには、郡上八幡城の城下町として開かれた町割と幾筋もの水路が残り、袖壁(そでかべ)で仕切られた間口の狭い古い建物が軒を連ねている。
再び列車で先に進むと、映画などの撮影地にもなった趣のある木造駅舎の深戸(ふかど)駅に到着した。木製の改札口を抜けた先に長良川が流れ、川沿いに桜並木の緑が続く。
稲穂が顔を出したばかりの田んぼを眺めながら、本数の少ない列車を待つ。辺りはいつしか、そよ風に乗って漂ってきた稲の甘い香りに包まれていた。
文・写真/越 信行
長良川鉄道は、旧国鉄越美南線として1923年に一部開業。深戸駅は1928年開業。美濃太田駅から1時間10分
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(出典:「旅行読売」2021年9月号)
(Web掲載:2023年3月15日)