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【旅する喫茶店】東海館喫茶室(伊東温泉)

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 静岡県
> 伊東市
【旅する喫茶店】東海館喫茶室(伊東温泉)

入り口の唐破風や鶴の彫刻が目を引く

 

昭和の温泉旅館の日の当たる縁側で

伊豆の名湯、伊東温泉の温泉街を流れる伊東大川の畔(ほとり)に、今ではもうあまり見られない重厚な3階建ての木造旅館が立っている。玄関の唐破風(からはふ)と客室の窓の高欄(こうらん)、ガラス戸の「温泉旅館東海館」の金文字などに、古き良き時代の温泉宿の風情を感じる。

旅館は1997年に営業を終えた。一時は取り壊す話が出たが、市民から「伊東のシンボルとして建物を残してほしい」という声が上がり、寄贈を受けた伊東市が約3億円をかけて耐震工事と補修を施し、4年後に観光・文化施設としてよみがえった。

昭和初期築の建物は、材木商もしていた旅館の主人が名木・珍木を用い、大工に競わせて作ったそうで、当時の意匠が残る。「客室のちゃぶ台やたんす、火鉢は市民が寄贈してくれた古道具。部屋になじんでいます」という市の担当者の言葉を聞き、地元の人たちの思い入れを感じた。断層が近い伊東は地震が多く、昔日の温泉場を思い起こさせるような、古い木造の建物はほとんど残っていないそうだ。

伊東大川沿いに立つ東海館。4階部分は望楼になっている
座敷席と縁側のソファ席が並ぶ1階の喫茶室

この建物の存在は知っていても、1階の旧小宴会場が喫茶室になっているのを知る人はそれほど多くないだろう。建物を見学した後に寄ってみてほしい。週末はタイル張りのレトロな内湯に湯を張るので、湯上がりの休憩所代わりにもなる。

喫茶室の縁側のソファに座って川の流れを眺めていると、冬の午後の日差しが水面に映り、川沿いの木々に揺れる光を投げている。そんな穏やかな風景のそばで抹茶と和菓子を味わう、ぜいたくな時間だった。

文/福﨑圭介 写真/青谷 慶

地元の菓子店で作る練り切りと抹茶のセット。あんみつやパフェ、コーヒー、紅茶などもある

東海館喫茶室

住所:静岡県伊東市東松原町12-10
営業:9 時30分~ L.O.16 時30 分/第3 火曜休(文化施設は~21 時、入浴は土・日曜と祝日のみ)/入館料200円(入浴料500円)
交通:伊東線伊東駅から徒歩9 分
TEL:0557-36-2004

※掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2023年3月号)
(Web掲載:2023年3月16日)

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Writer

福崎圭介 さん

新潟県生まれ。広告制作や書籍編集などを経て月刊「旅行読売」編集部へ。編集部では、連載「旅する喫茶店」「駅舎のある風景」などを担当。旅先で喫茶店をチェックする習性があり、泊まりは湯治場風情の残る源泉かけ流しの温泉宿が好み。最近はリノベーションや地域再生に興味がある。趣味は映画・海外ドラマ鑑賞。

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