ゆづくしSalon一の坊の「広瀬川源流露天風呂」

「ぐっすり眠れる温泉宿」というお題で私がまず思い出したのは、静寂の宿だった。渓流や海の音も聞こえず、なるべく客室数は少なく、ひとり客の多いところがいい。

箱根の「養生館はるのひかり」は、12歳未満の子どもは宿泊ができず、遊興や記念日の宿泊はお断りされている。養生のための宿泊客ばかりなので、館内は静まり返っていて心地よかった。

山形の「丸屋」も全7室でひとり客歓迎の宿。私が泊まった客室には、障子にロールカーテンが設（しつら）えてあり、暗闇が保たれていた。

寝具へのこだわりも大切だ。「板室温泉 大黒屋」には、寝具メーカー・西川のふとんが敷かれていて、ひとり専用部屋にはベッドが置いてあった。和風の温泉宿は大好きだけれど、ベッドのほうが正直ありがたい。

温泉リゾートホテルは機能性が高く、居心地の良さは抜群。裏磐梯の「ホテリ・アアルト」は、米国シェアNo.1・シーリーのマットレスを導入している。

宮城の「ゆづくしSalon 一の坊」の客室にある、一の坊オリジナルの三角クッションはものすごい逸品で驚いたので、ぜひ体をあずけてみてほしい。

初めて訪れた温泉宿で、なかなか安眠はしにくい。家とは違う寝具、空調、照明。たらふく夕食を食べて重たいお腹。そして、早起きして朝風呂と朝食へ行かなければというプレッシャー。温泉に十分つかって体は温かいのだけど、どうしても睡眠は浅くなってしまう。そんな中で、ぐっすり眠れる温泉宿は、素晴らしい存在だと思う。

全7室のレトロモダンな宿

月山（がっさん）の麓に位置し、歴史ある湯治場の面影が残る肘折温泉の宿。明治元年創業の歴史ある宿だが、全7室の客室を含め館内はモダンな雰囲気。二つの源泉をかけ流す露天風呂や旬の採れたての山菜、有機無農薬野菜を使った夕食も楽しみだ。

丸屋　ひとり泊データ

土曜・祝前日および、年末年始・GW・お盆などの繁忙期を除く／1泊2食2万9850円～／トイレ付き14畳和室など／山形新幹線新庄駅からバス1時間、肘折温泉下車すぐ（ 大蔵村南山519）／TEL：0233-76-2021

暮らすように滞在できる

食事やドリンクなどが料金に含まれているオールインクルーシブの宿。3本の源泉を持ち、野趣あふれる露天風呂をはじめ、8種の湯船に注ぐ。食事は和洋中心のオーダービュッフェ式。4月28日にサウナやハンモック付きなどのユニークな客室が新たに登場。

ゆづくしSalon一の坊　ひとり泊データ

通年可／1泊2食3万2000円～／トイレ付き30平方メートルダブルなど／仙山線作並駅から送迎5分 ※要予約（仙台市青葉区作並長原3）／ TEL：0570-05-3973

大自然に囲まれた北欧風ホテル

裏磐梯の自然に囲まれた全17室のリゾートホテル。2万2000平方メートルを超える敷地を持ち、新緑の中を散策するのも心地よい。客室は北欧風でモダンなたたずまい。地下545メートルから湧き出る源泉は、露天風呂や大浴場にかけ流しで注ぐ。夕食は創作フレンチ。

ホテリ・アアルト　ひとり泊データ

平日のみ可／1泊2食5万円～ ／ トイレ付き33平方メートルダブルなど／磐越西線猪苗代駅から送迎20分 ※要予約（北塩原村檜原大府平1073-153）／TEL：0241-23-5101

源泉とアートに癒やされる

下野（しもつけ）の薬湯として親しまれてきた板室温泉の宿で、「保養とアート」をコンセプトにしている。月替わりで絵画や器などの展覧会が行われるほか、館内の随所にも常時作品を展示。露天風呂や大浴場では、40度前後の源泉をかけ流す。岩盤浴に似た韓国式の黄土浴（おうどよく）もできる。

板室温泉 大黒屋　ひとり泊データ

通年可／1泊2食2万6650円～／トイレ付き23平方メートルシングルなど／東北新幹線那須塩原駅から送迎30分※要予約（那須塩原市板室856） ／ TEL：0287-69-0226

健康食と温泉でのんびり

養生を目的とした逗留（とうりゅう）宿で、1人または2人での利用を原則とし、連泊を推奨している。人と土は一体という「身土不二」の考えに基づき、無農薬栽培の野菜や玄米を中心とした食事を提供。初夏から秋の大浴場は、窓を開放し、半露天風呂の雰囲気となる。

養生館はるのひかり　ひとり泊データ

通年可／1泊2食1万7310円～／トイレ付き23平方メートルセミダブルなど／箱根登山鉄道箱根湯本駅から箱根湯本温泉旅館送迎バスBコース（早雲通り線）で5分　※定時運行、予約不要、100円（箱根町湯本554）／TEL：0460-85-5641

5選の宿紹介文／安部晃司

（出典：「旅行読売」2023年6月号）

（Web掲載：2023年5月29日）

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