【私だけのひとり旅】鎌倉の寺院でアジサイや竹林に癒やされる(1)
明月院のアジサイ。毎年多くの花をさかせるため、7月上旬にせん定をする予定という(写真/鎌倉市観光協会)
明月院ブルーや報国寺の竹林 彩り豊かな古都の初夏
春から初夏へ。花は桜からアジサイへと主役が代わり、萌(も)え出(い)づる新緑がまぶしい。鎌倉はアジサイの名所が多く、最もにぎわう季節でもある。この地には幾度となく訪れているが、魅力は尽きない。ひとり旅の気楽さで北から東へと、にぎわいから静寂を求めて歩くことにした。
北鎌倉駅からのんびり歩き、「あじさい寺」としても知られる明月院の門前に立つ。表参道の両側から青い花と葉がせり出し、参拝客を出迎える。昨年、人の流れを分散するため中庭園に新たに「風の小径(こみち)」ができたが、それでもかなり混み合う。開門直後に訪れるのがいい。
アジサイの花期は長く、初めは白っぽかった花がスカイブルーになり、やがて「明月院ブルー」と呼ばれる濃く鮮やかな青へと変わる。明月院企画広報担当の大月惠(めぐみ)さんは「その変化を楽しむお客さんもいらっしゃいます」と話す。例年は6月第2週がピークだが、今年は早まりそうだ。5月末頃から約1週間は、本堂裏の後庭園で花ショウブが見頃を迎える。白や青紫の花弁に付け根の黄色がアクセントを添え、凜(りん)として美しい。
明月院を後に、起伏のある道を越えると、鬱蒼(うっそう)とした木々に囲まれた鶴岡八幡宮の神域だ。鶴岡八幡宮は源頼義が祀(まつ)った鶴岡宮(現由比若宮)を頼朝が現在の地に遷し、関東の守護とした。昨年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は記憶に新しい。大石段を上りながら実朝暗殺のシーンを思い起こし、感慨深かった。
流鏑馬(やぶさめ)馬場を通って、東へ向かう。岐(わか)れ道バス停の前にBergfeld(ベルグフェルド) 雪ノ下本店がある。神戸の老舗「フロインドリーブ」で修業した先代が、1980年に創業したドイツパンの店だ。人気店がしのぎを削るパンの食べ比べも、目的の一つだ。
売店に隣接するカフェで、ランチに「ベルグサンド2」を注文。3種のライ麦パンが味わえるオープンサンドだ。濃褐色のプンパニッケルはもっちりしてかみ応えがあり、自家製のチキンレバーペーストと良く合う。ライ麦パンは腹持ちもいいので、歩き回る旅の食事にはぴったりだ。
文/田辺英彦 写真/齋藤雄輝
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鎌倉 立ち寄りたい寺社&店
1160年創建の臨済宗の寺。境内には約2500株のアジサイが生育し、うち9割がヒメアジサイという日本古来の品種だ。6月の花期はアジサイのブルーの花に包まれる。後庭園は300円の募金で入れる。
■9時〜15時30分(6月は8時30分〜16時30分)/無休/500円/TEL:0467-24-3437
※掲載時のデータです。
伝統的なドイツパンが味わえる店。ライ麦パン(590円)やハード系のほか、地元客の要望で作った長時間発酵で軟らかい食パンのヒューゲルブロート(630円)もおすすめ。スイーツや焼き菓子もある。カフェではランチのほか隣の本店で買ったパンを食べられる。
■10時〜17時30分(カフェ11時〜16時)/月・火曜休/鎌倉駅からバス5分、岐れ道下車すぐ/TEL:0467-24-2706
※掲載時のデータです。