【鉄印帳の旅】甘木鉄道
筑紫(つくし)平野の田園地帯を行く甘木鉄道は、旧陸軍大刀洗(たちあらい)飛行場への物資輸送を目的として1939年に開通し、旧国鉄甘木線を経て、現在は第三セクター鉄道として運行している。
鹿児島線との接続駅で、起点となる基山(きやま)駅から国鉄急行色に塗られたディーゼルカーに乗車。しばらく工場や物流センターが立ち並ぶ中を走り、西鉄天神大牟田線と接続する小郡駅周辺の住宅地を抜けると、前方に筑紫山地が顔をのぞかせた。
駅前の花壇の花々が目を引く松崎駅で下車。奈良時代の郡衙(ぐんが/郡役所)跡とされる下高橋官衙(かんが)遺跡へ足を伸ばし、駅へ戻る途中で薩摩街道の面影を今に伝える旧松崎旅籠油屋と南構口(みなみかまえぐち)・北構口を見学した。
再び列車に乗り太刀洗駅へ。開業当時の駅舎を利用した大刀洗レトロステーションで昭和時代の懐かしい品々を見たのち、キリンビール福岡工場へ出向き工場見学とできたてビールの試飲を楽しんだ。
高田駅を過ぎて田んぼが一面に広がる中を進むと、ほどなく終点の甘木駅へ到着する。鉄印は和紙にスタンプを押したオリジナル版のほか、折々の限定版がある。今回は、新しいカラーデザインが施されたのを記念して発売されたAR307鉄印を頂いた。「カラフルで楽しくなる車両と国鉄時代そのままのレトロ感に触れながら、沿線観光を楽しんでほしい」と同社総務営業部の川上正晴さんは話す。
駅から路線バスで「筑前の小京都」と呼ばれる秋月へ。杉の馬場に面する黒門茶屋で、郷土料理の蒸し雑煮(750円)と川茸(かわたけ)定食(1800円)を味わい、石垣が目を引く秋月城跡と町を一巡り。帰りに偶然乗車したのはAR307形。列車に揺られていると楽しかった1日が思い起こされた。
鉄印の記帳は甘木駅窓口カウンターにて、8時30分~17時30分/日曜、祝日休、12月31日~1月3日休。
鉄印帳/2200円、鉄印の記帳料/300円~(乗車券の提示が必要)
TEL:0946-23-1111
(2023年「旅行読売7月号」より)
(WEB掲載:2023年5月31日)
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