駅舎のある風景 糒駅【平成筑豊鉄道】
石炭輸送の跡地を走りイチョウの大木が立つ駅へ
石炭輸送で活躍した旧国鉄の3路線を引き継いだ平成筑豊鉄道は、その名の通り平成元(1989)年に開業した。
行橋(ゆくはし)駅から田川線の列車に乗り直方(のおがた)駅を目指す。途中、内田駅を過ぎると、前方車窓に独特の形が目を引く香春岳(かわらだけ)が見えてきた。セメントの原料となる良質な石灰石の採掘のために扁平(へんぺい)な姿となった一ノ岳のほか、二ノ岳、三ノ岳からなる。列車はその山を回り込むように田川方面へと進んでいく。
旧三井田川鉱業所伊田坑跡地に残る二本煙突や竪坑櫓(たてこうやぐら)など、往時の炭鉱施設を望む田川伊田(たがわいた)駅から直通する伊田線へ入ると、二ノ岳、三ノ岳も含めた山の全容が車窓に見えた。
翌朝、駅前のイチョウが印象的な糒(ほしい)駅へ向かう。水色の駅舎脇の広い構内は、炭鉱への引き込み線があった名残だという。黄金(こがね)色の葉が朝日に輝くなか、駅舎と香春岳を背にして黄色い列車が出発していった。
文・写真/越 信行
伊田線は1893年、前身の筑豊興業鉄道により一部開業。糒駅は1900年開業。行橋駅から1時間20分
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