【鉄印帳の旅】平成筑豊鉄道
炭鉱の町として明治中期から栄えた筑豊地方は、筑豊興業鉄道や豊州鉄道などによって鉄道路線が敷かれた。旧国鉄に引き継がれたこれらの多くの路線は、戦後のエネルギー革命で使命を終え廃止されたが、平成筑豊鉄道は第三セクター鉄道として今でも走り続ける。
約130年の歴史を持つ沿線には、古くから残る鉄道施設も多い。直方駅を出てほどなく渡る橋脚が赤レンガづくりの嘉麻川橋梁もその一つ。列車は車窓に福智山を見ながら彦山川沿いを進んでいく。
糸田線との分岐駅で、鉄印がもらえる金田駅でまずは下車。鉄印は、美大卒で元美術館学芸員という経歴を持つ同社の運転士・藤本郷さんがデザイン。達磨絵のイメージで考案されたマスコットキャラクターの「ちくまる」が躍る。
懐かしい駅前食堂風の店構えの「ゆうざき」で昼食にホルモン焼きそば定食(680円)を食べ、再び列車へ。伊田線と田川線が接続する田川伊田駅に着くと、元炭鉱だったことを彷彿させる煙突と竪坑櫓が小高い丘の上に聳える。公園として整備された園内を巡り、すぐ脇にある「田川市石炭・歴史博物館」で往時の様子にも触れる。
再び列車で田川線方面へ。石灰石採掘のため一部が扁平な山容の香春岳を見ながら、国の登録有形文化財の内田三連橋梁を過ぎると、TVドラマのロケで使われた古いセットがそのまま残る油須原駅に到着する。タイムスリップしたかのようなひとときを過ごし、隣駅近くの「源じいの森温泉」に行きがてら、もう一つの登録有形文化財である第二石坂トンネルも見物。
温泉で湯につかっていると、懐かしさで満たされた心がとても心地よく思えた。
平成筑豊鉄道
鉄印帳の販売は、金田駅窓口で月?金曜(祝日を除く)の10時~18時30分(13時~14時は本社にて)。鉄印帳2200円
鉄印の記帳は、金田駅窓口横の自動販売機で5時30分~22時30分。記帳料300円
TEL:0947-22-1000
(出典「旅行読売」2021年3月号)
(ウェブ掲載 2021年3月5日)