禅寺の寺宝に見る女性と仏教
法堂建築としては日本最古といわれる相国寺の法堂
臨済宗相国寺(しょうこくじ)派の大本山である相国寺は、室町幕府三代将軍・足利義満の命により14世紀の末、足利将軍家の邸宅「花の御所」の東側に創建。その後、幾度にもわたる焼失と復興を経て、現在の法堂は豊臣秀頼の寄進で1605年(慶長10年)に再建された。境内には13の塔頭ほか、山外に金閣寺、銀閣寺、眞如寺の塔頭を有する。
さらに600年余りの間、京都の中心にある相国寺は、絶海(ぜっかいちゅうしん)中津や横川景三(おうせんけいさん)など五山文学を代表する禅僧や、如拙(じょせつ)、周文(しゅうぶん)、雪舟らの日本水墨画の基礎を築いた画僧を多く輩出したことで知られる。境内にある承天閣美術館は、同寺をはじめ、金閣寺や銀閣寺などの塔頭寺院に伝わる国宝5点、重要文化財145点を含む貴重な文化財を収蔵する。現在、同美術館で「禅寺に伝わるものがたりⅡ期〜女性と仏教〜」(7月16日まで)をテーマに企画展を開催中だ。相国寺や塔頭寺院伝来の寺宝から、女性と仏教の関わりや歴史をたどることができる。
本展では、相国寺が所蔵する「観音三十三変相図」のうち、尼僧が寄進したものなど一部が展示される。また金閣寺からは中御門(なかみかど)天皇の皇女で、宝鏡寺の第23世となった浄照明院宮理秀(りしゅう)尼の漢詩和歌色紙を出展。銀閣寺は数多く所蔵する寺宝の中から女性にまつわる名品を選び、そのうちの一つ、普明院宮元瑤(げんよう)尼が寄進した「観音図」が展示される。元瑶尼は後水尾院の第8皇女で、若くして画技に優れ、観音菩薩像を描いて教化に努めたという。また眞如寺は、2023年が開基である鎌倉時代の尼僧・無外如大(むがいにょだい)の生誕800年にあたることから、本展では無外如大尼の肖像画など眞如寺の名宝を多数公開する。
眞如寺は1286年(弘安9年)、無外如大尼によって創庵された「正脈庵」に端を発する。後に同庵に夢窓国師を迎え、足利尊氏側近の高師直や弟の足利直義の外(げ)護(ご)を受けて伽藍が整備され、室町幕府の手厚い保護によって広大な境内を有した。16世紀からは門跡寺院の宝鏡寺で住持を務めた、皇女たちの菩提所とされている。
京都浪漫・悠久の物語「禅寺に伝わる女性と仏教の物語~相国寺・眞如寺・金閣寺・銀閣寺~」
2023年6月5日(月) よる8時~8時53分 BS11にて放送
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