温泉旅館「界」で楽しむ“茶の時間”
温泉旅館に着くと、お茶とお菓子のもてなしを受ける。ひと息つくことで、移動の疲れが和らぎ、心身が落ち着く。緑茶に含まれるアミノ酸の一種・テアニン(旨み)にはリラックス効果があり、ポリフェノールの一種・カテキン(渋み)は抗菌や免疫機能改善、生活習慣病予防などが期待される。
星野リゾートの「界」は、「旅の楽しさ・ご当地魅力」などをテーマにする温泉旅館。北海道から鹿児島まで22施設あり、各施設で「ご当地茶」を用意する。茶産地にある施設ではこの季節、新茶をプランで提案。
例えば、日本屈指の茶処・静岡県にある「界 遠州」。浜名湖畔の舘山寺温泉にあるここは、「煎茶」をテーマにした温泉旅館で、ティーセラーや利き茶などの「ご当地楽(がく)」で通年、静岡茶が楽しめる。
2023年6月30日まで、「静岡新茶侘(わ)び茶日(さび)滞在」を開催。今年は茶葉を自分でブレンドする「静岡新茶合組(ごうぐみ)体験」が加わったほか、「遠州つむぎの間 茶処リビング付き客室」で楽しむ3種の新茶サービス、和会席にあわせたティーペアリングコースを堪能できる。
茶の産出額で近年全国一位を誇る鹿児島県には、霧島茶の産地である霧島市に「界 霧島」がある。桜島を眺める絶景の温泉旅館だ。
2023年6月20日まで「霧島新茶滞在」を開催。新茶を含む8種の霧島茶(ゲンセン霧島茶)を堪能するプランで、各茶を最適な淹れ方で提供し、それらを県内焼酎蔵7社の焼酎と組み合わせる。茶農家(ヘンタ製茶)での新茶摘みと釜炒り茶体験ができるほか、今年は絶景テラスで「新茶と熟成茶の飲み比べ」も。
北陸は石川県の「加賀・能登」でお茶と言えば「棒茶」。1902年に金沢で誕生した棒茶は、茶の茎の部分を焙煎した「ほうじ茶」で芳ばしい香りと自然な甘みが特徴。上質な茎の部分を使って石川県で生産されるものを「加賀棒茶」と呼ぶ。
山代温泉の「界 加賀」では、茶室で「上林金沢茶舗」の加賀棒茶を提供。一番茶の茎のみを使って、軽く焙煎した浅煎りと深煎りを用意。水色、香り、味わいを比較できる。
山陰の島根県松江市にあるのが、滞在を通して出雲文化を堪能できる「界 玉造」。松江藩7代藩主・松平不昧(ふまい)公ゆかりの地であり、藩主自らが茶道を奨励。宿には茶室があり、不昧流の茶の湯体験を実施(無料)。
トラベルライブラリーや湯上がり処で「ご当地茶」を提供するのが界の特徴だ。2022年11月開業の長崎県「界 雲仙」は宿泊棟に隣接する湯小屋の湯上がり処で、橙(だいだい)の乾皮を配合した東坂茶園の橙ほうじ茶を提供。香りよくスッキリした味だ。
全国の界では、温泉そのものを楽しみ、温泉療養の効果を高める「うるはし現代湯治」を行う。湯守として入浴法などを紹介するスタッフは、「入浴前後の水分補給に適したご当地茶をご用意し、地域らしさも兼ね備えます。客室のお茶も、入浴前後、就寝前、起床後など、ご滞在シーンに合わせて温泉効果を高めるのに適したお飲物をご提案しています」と話す。
ほっと一息を、「界めぐり日本茶さがし」の旅でぜひ。
写真/木下清隆、星野リゾート
(出典:「旅行読売」2023年7月号)
(Web掲載:2023年6月7日)