【日本茶の時間】宇治の旅(1)平安期から旅人をもてなす茶屋で一服 通圓茶屋
24代目当主の通円祐介さん。800年前の茶釜や大小の茶壺に見守られて
店主と話し、好みの一杯を選ぶ
煎茶も玉露(ぎょくろ)も、生まれは宇治である。日本茶を知る旅でこの地を訪ねないわけにはいかない。古くから人々を引きつける風光明媚な川の畔(ほとり)を目指した。
東海道新幹線京都駅から宇治駅までは奈良線で30分。茶商の暖簾(のれん)が揺れる宇治橋通り商店街を歩き、宇治川沿いに出る。日本三古橋の一つである宇治橋から上流を望めば、山々の新緑がまぶしい。中の島を挟み、世界遺産の平等院と宇治上神社が向き合うが、今回の目的地は橋の東詰に立つ通圓茶屋だ。初代が平安末期の1160年に庵(いおり)を結び、当初は橋守として、その後は茶屋として旅人をもてなしてきたという。
間口の広い建物の中に入ると、左手で茶の販売をしている。右手奥は茶房。そして正面、茶釜の向こうで迎えてくれたのが、24代目当主の通円(つうえん)祐介さん。背後の壁際には大小の茶壺が並び、一休和尚や豊臣秀吉ゆかりの品々も鎮座する。茶を淹れてくださっている間に、創業800年以上という長寿の秘密を探ると「お茶の商いだけを、手を広げずに続けてきたことでしょうか」と通円さん。「川と通りに挟まれて、物理的にも広げようがなかったんですけどね」と笑いつつ、「もちろん宇治茶ブランドあってのことです」と添えた。
出されたのは煎茶。口の中で爽やかな香りが広がり、旨みも強い。全国の日本茶を知る通円さんにほかの産地との違いを尋ねると、「いい宇治茶は、お茶の持っている力が違います」ときっぱり。「煎がきく、という言い方をしますが、2煎、3煎と楽しめて、余韻もしっかり残ります」。宇治茶と言っても種類は多く、好みや用途も人それぞれだ。通圓で扱っている30種ほどの商品の中から、おすすめを飲ませてもらった(下記参照)。
茶葉を購入し、宇治川を望む茶房でひと休み。ここで一服した有名無名の旅人に思いを馳せた。
シーン別 おすすめのお茶3選
朝一番や寝る前にも
ほうじ茶 うきふね
香ばしくさっぱりとした飲み口のほうじ茶は、高温で焙煎するため成分は抑えめ。カフェインも少ないので、起床後や就寝前にも向いている。京都では食事の際によく飲まれる。
甘い菓子に合わせるなら
おせん茶 あおい
スッキリした香りと味わいの煎茶は万能選手で、菓子にもよく合う。渋み成分のカテキンを多く含む。頭を冴えさせたい時は湯温を高めにし、カテキンやカフェインを引き出すといい。
ほっとリラックスしたい時に
玉露 ふじつぼ
濃厚な旨みが味わえる玉露は、いわゆる「お茶を飲みたい」時に。テアニンというアミノ酸が多く含まれ、リラックス効果が高い。カフェインも多いので、空腹時は避けること。
文/内山沙希子 写真/酒井羊一
【日本茶の時間】宇治の旅(2) 茶を学び、体験できる新名所 お茶と宇治のまち 歴史公園 茶づなへ続く
(出典:「旅行読売」2022年7月号)
(Web掲載:2022年8月16日)
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