【日本茶の時間】宇治の旅(2)茶を学び、体験できる新名所 お茶と宇治のまち 歴史公園 茶づな
宇治川の中州で営まれていた茶園を再現した「修景茶園」。ゴールデンウイークには茶摘み体験も行われた
淹れて広がる宇治茶の世界
【日本茶の時間】宇治の旅(1)平安期から旅人をもてなす茶屋で一服 通圓茶屋から続く
好みの一杯を知ると宇治茶への興味も増す。通圓茶屋を出て宇治川下流へ向かうと、京阪宇治駅のそばに茶畑が見えてきた。ここは2021年8月開業のお茶と宇治のまち歴史公園。宇治茶の魅力と宇治の歴史・文化を学べる施設で、茶園や史跡を含む敷地は2.5ヘクタール。中心に立つのがお茶と宇治のまち交流館、通称「茶づな」だ。
館内にはミュージアムやショップ、レストランが備わるが、最大の特徴は開放感のある体験室。豊富な体験プログラムの中から予約したのは「淹い れ方で変わる!煎茶の淹れ方体験」(所要1時間、1000円)。先ほどは通円さんに淹れていただいた煎茶を、今度は自ら茶器を使って淹れるのだ。
用意された盆の上には茶缶、湯冷まし、宝瓶(ほうひん)、湯呑みと茶菓子が載っている。見慣れた急須と違っても心配は無用。日本茶インストラクターの先生が、茶の歴史や栽培方法、成分などの解説を交え、おいしい煎茶へと導いてくれる。
「湯冷ましを手に持ち、熱いと感じなくなったら、お湯を湯呑に移しましょう」などと言われた通りにするうち、「最後の一滴まで注ぎきってください」と1煎目が入った。口にすると甘くもなく苦くもなく、バランスの取れた味わい。「ここから、お茶菓子に合う味に近づけていきます」と聞き、茶の奥深さを実感。2煎目、3煎目と味や香りの変化を楽しんだ。
宇治茶が一大ブランドとなった要因に、栽培に適した気候や風土、消費地である都の近さ、時の権力者のお墨付きなどがある。が、個人的には学芸員の中畑伶威(れい)さんの話に深く納得した。「宇治は古くから、奈良と京都を結ぶ交通の要衝でした。人が集まる、つまり集まった人にお茶を振る舞う機会がある、ということです」。宇治茶の発展は「お茶を一杯どうぞ」の心が支えていたのかもしれない。
文/内山沙希子 写真/酒井羊一
(出典:「旅行読売」2022年7月号)
(WEB掲載:2022年8月16日)
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