「わびさび」を知る大人の京都旅
ぽってりとした形が手の温かみを感じさせる樂焼(らくやき)
京都といえば修学旅行の定番の行き先だが、学生時代は京都の歴史や日本の伝統美などに、なかなかピンと来なかった人も多いのではないだろうか。そこで、大人になった今こそ、日本の「わびさび」を体現する旅に出てみたい。
「わびさび」で容易に連想されるのが、茶の湯の精神だろう。京都を代表する焼き物・樂焼は、古くから「一樂二萩三唐津」と称されるように、茶人の間で好まれてきた茶陶(ちゃとう)だ。樂家の当主が作陶したもので、手とへらだけで成形した「手づくね」が特徴。その造形や黒と赤のモノトーンの釉調は、初代・長次郎が千利休の「侘茶」の思想や美意識に深い影響を受けたからといわれる。それらの貴重な茶陶を観賞できるのが樂美術館だ。樂家歴代の樂焼を中心に、茶道工芸品など約1200点を収蔵。コロナ禍を受けて15代吉左衛門さんが、日時限定で樂焼の魅力をオンラインで伝えている(有料)。
静かに自分を見つめなおす、そんな大人の時間を過ごせるのも京都ならでは。北区にある曹洞宗の寺院、源光庵の本堂には丸い「悟りの窓」と四角い「迷いの窓」があり、しばし禅の教えに浸ることができる。ここには関ヶ原の戦いの直前、伏見城の戦いで敗れた徳川家康の忠臣らの血が付いた伏見城遺構の「血天井」も残されている。
毎月7日と17日のお茶席に客人を招待する炭屋旅館は、利休の茶の湯の精神を受け継ぐ宿。にぎやかな三条通り近くにありながら、純和風の空間や素材の味を生かした京懐石が、大人にふさわしい京都の旅を演出する。
(WEB掲載:2022年5月2日)