【青春18きっぷでできること】JR線完乗を目指して、まずは栃木県で“プチ”完乗!?
東北線蒲須坂(かますさか)―片岡駅間。黄色い花はカタバミ。遠くに見えるのは高原山
栃木県内のJR在来線約220キロを1泊2日で“完乗”
プロフィールに「JR線全線完乗」を記す鉄道専門家や鉄道ファンは多い。その意味は、「現在運行しているJR線に全て乗車した」ということだ。しかし改めて調べると、現在は約170線区、約2万営業キロの〝JR網〟が全国に張り巡らされている。どんなに短い線区でも取りこぼしてはいけない。また昨年9月に西九州新幹線が開業したように、新線ができれば乗車して完乗を〝更新〟しなくてはならない。
私のようなゆる~い鉄道ファンにとっては夢のような話だが、その達成感はなんとなく想像できる。そこで完乗の手始めに、青春18きっぷを使って私の故郷でもある栃木県のJR線に全て乗るプランを考えてみた。栃木県の在来線営業キロは約220キロで、全国で33位。ちなみに第位は北海道の約2200キロ、新潟県と福島県が約650キロで続く。JR線のない沖縄県を除くと、最短は奈良県の約90キロである。
あくまで青春18きっぷを使うプランなので、通常運賃よりもお得にならなくてはいけない。この点がやや難しく、1日に2410円以上の区間を乗車する必要がある。少しは観光も加えたい……と難儀して考案したのが下のモデルコースだ。
※上記モデルコースの交通費:青春18きっぷ2回利用(4820円)で、2880円お得。
東北線から延びる枝線を乗り尽くす
まずは東京駅から小山(おやま)駅へ。小山駅から東へ延びる水戸線はすぐに県境を越えてしまうのだが、ここも無視するわけにないかない。そこで1駅だけ乗って茨城県の小田林(おだばやし)駅で折り返す。「この面倒くささが、実は完乗の醍醐味(だいごみ)なのだ」と、自分に言い聞かせる。
両毛(りょうもう)線を桐生(きりゅう)駅まで乗ってクリアし、折り返して史跡足利(あしかが)学校を見学。小山駅から宇都宮駅まで北上し、時間は早いが初日は終了。宇都宮城址公園を散策し、「ジャズとカクテルの街」で1泊する。餃子(ぎょうざ)も忘れずに。
日光線、烏山線を往復し、みちのくの玄関口・新白河駅まで
翌日は日光線で日光まで往復してから烏山(からすやま)線へ。大容量蓄電池を備えたハイブリッド車両が、のどかな山里を静かに走る。終点の烏山駅の一つ前、滝駅で下車すると、幅65メートル、落差20メートルの龍門の滝へは徒歩5分。滝の上を烏山線が走り、列車の撮影スポットとしても人気だ。
烏山駅で折り返して宝積寺(ほうしゃくじ)駅まで戻ったら、東北線を北上する。のどかな田園地帯や牧草地、那須連山などを眺めながら関東平野の北端から山間部へ入ってゴールの新白河駅へ。ゆっくり流れる車窓に、まだ見ぬ故郷の素顔が隠れていることだろう。そしてその良さを実感できることと確信する。
青春18きっぷでは乗車できないが、新白河駅から東北新幹線で帰京すれば、在来線・新幹線ともに完乗となる。
今回は栃木県を例にしたが、都道府県に限定せず、「東北」「関東」「近畿」など地域を広げて完乗ルートを考えてみてもいい。時刻表が次第にヨレヨレになっていくのだが、それもまた青春18きっぷの楽しみ方の一つである。
文/渡辺貴由 写真/越 信行
(出典:「旅行読売」2023年7月号)
(Web掲載:2023年7月29日)