【天空の紅葉旅】「月山もも」さんが語る 心に残る錦秋の秋田駒ヶ岳といで湯
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思いがけず出合えた秋田駒ヶ岳の紅葉
素晴らしい紅葉と偶然に出合い、喜び倍増!
山に登り、温泉宿に泊まる旅を生きがいにしている私だが、紅葉を目的にした旅はあえてしないようにしている。紅葉シーズンは温泉宿も交通機関も混雑するから、前々から日程を決めて予約しておく必要がある。だけど紅葉が盛りを迎える時期は天候によって毎年異なるし、天気が悪ければ紅葉しているエリアにたどり着けないこともある。「紅葉を見る」ことを目的に旅をして、それが叶えられなかった時にがっかりしたくないと思ってしまうのだ。
だから旅の目的はあくまでも「すばらしい温泉宿に泊まること」で、紅葉は見られたらラッキー。秋はいつもそんな風に旅をしている。
そんな「紅葉をあえて求めない」私だが、秋田県の田沢湖周辺エリアですばらしい紅葉に偶然出合えた旅は強く印象に残っている。
9月下旬に秋田駒ヶ岳に登り、麓の温泉宿に泊まる旅をした。秋田駒ヶ岳は最高峰の男女岳(おなめだけ)が標高1637メートルの山だが、田沢湖駅から標高1300メートルの8合目までバスで行けるので、登山に慣れていない人でも気軽に歩きやすい。
バスを降りて30分ほど歩くと、前を見ても後ろを見ても一面が美しく紅葉している、すばらしい景色の中を歩くことができた。山頂まではさらに1時間ほど登ることになるが、秋田駒ヶ岳にはもう何度も登頂しているので、山頂は目指さず、時間が許す限り紅葉に染まった登山道を歩いた。
通称「ムーミン谷」と呼ばれる谷間の小径は、夏にはチングルマなどの高山植物が咲き乱れる場所だが、紅葉の季節も美しかった。
3時間ほど紅葉ハイクを楽しんだ後は、宿泊する温泉宿に向かう。秋田駒ヶ岳の周辺エリアにはすばらしい温泉が湧いており、魅力的な旅館が数多くある。当日に天気が悪く登山を諦めたとしても、温泉旅で十二分に満足できるのがこの地のすばらしいところだと思う。
この時宿泊したのは水沢温泉郷の「駒ヶ岳温泉」だ。内湯と露天風呂は日帰りでも入浴できるが、宿泊すれば宿泊者専用の貸切露天風呂にもつかることができる。川沿いに造られた二つの貸切露天風呂はもちろん源泉かけ流し。川の音を聞きながらゆったりと湯あみを楽しめば、山を歩いた疲れもすぐに癒えそうだ。
夕食では秋田の地酒の飲みくらべセットをいただきながら、比内地鶏や八幡平ポークを使った料理を楽しむ。コースの終盤で提供される十割蕎麦(そば)も絶品だ。この宿はあの鶴の湯温泉の姉妹館で、山芋をふわふわ食感の団子状にしてたっぷりの野菜と出汁(だし)で煮た、同館の名物料理「山の芋鍋」も味わえる。蕎麦でお腹いっぱいだったのについ、あきたこまちのご飯もお願いしてしまった。ご飯にも合う!
秋田駒ヶ岳登山の前後に泊まるなら、登山口行きのバスが出る「アルパこまくさ」に近い、田沢湖高原温泉郷の宿もいい。
「ホテルグランド天空」は文字通り〝天空の宿〟。露天風呂をはじめレストラン、ロビー、客室からも田沢湖を眺められる。夕食ではきりたんぽ鍋を味わい、朝食後は眼下に田沢湖を眺めながらコーヒーをいただいた。
秋田駒ヶ岳の紅葉が終わる10月上旬以降は、麓の温泉地で紅葉を楽しめるようになる。
田沢湖高原温泉郷の「ロッジアイリス」に10月中旬に泊まったときは、周辺の木々が紅葉していて露天風呂や部屋の窓からも色付いた木々を眺めることができた。
翌日にはバスで乳頭温泉郷に向かい、黒湯温泉で日帰り入浴をする。黒湯温泉までは休暇村前バス停から20分~30分歩くが、道すがらの紅葉が美しかった。色付いたブナでさながら黄金色のトンネルを歩いているようだ。湯浴みを楽しんだ後は孫六温泉を経由して乳頭温泉バス停に向かうが、こちらの道も先達(せんだつ)川沿いの木々が赤や黄色に色付いて美しい。
田沢湖周辺はどの季節に訪れても温泉と自然と食を楽しめるエリアだが、秋は格別だった。
文・写真/月山もも
(出典:「旅行読売」2023年月10月号)
(Web掲載:2023年9月26日)
秋田県仙北市田沢湖生保内下高野80-68
TEL:0187-46-2688
秋田県仙北市田沢湖生保内駒ヶ岳2-16
TEL:0187-46-2004
秋田県仙北市田沢湖生保内駒ヶ岳2-139
TEL:0187-58-1101