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【新・日本の絶景】国内最大級の現役採石場 “茨城のグランドキャニオン”石切山脈

場所
> 笠間市
見頃
通年
【新・日本の絶景】国内最大級の現役採石場 “茨城のグランドキャニオン”石切山脈

今は使われていない前山(まえやま)採石場と“地図にない湖”(写真/ピクスタ)

 

SNS映えすると好評の大きなモンブラン

鉱山や採石場跡が観光地になるケースはよくあるが、稼働中の現場を見せる所は多くないだろう。ここは“茨城のグランドキャニオン”と名高い石切山脈。1899年から続く日本最大級の稲田石の採石場だ。

駐車場は平日にもかかわらずほぼ満車。観光部門を運営するU-A(ウーア)の塙(はなわ)和也さんに人気の秘密を聞いた。

「ヒーローものの特撮やミュージックビデオの撮影がきっかけで訪問者が増え、2020年に入場料を設定し、採石現場の見学ツアー、カフェを始めました。カフェで出す大きなモンブランはSNS映えすると若い世代にも好評です」

稲田石のプレートに盛り付けられた名物のプレミアムモンブラン。コーヒーとセットで1800円 ※掲載時のデータです
前山採石場の眺めがいい、カフェのある第一展示場

早速「第一展示場」に向かうと、白と黒のまだら模様の岩肌をむき出しにした前山採石場が目の前に広が
り息をのむ。風のない日には水面が鏡のようになって山容が映り込み、とりわけ美しい姿を見せるそうだ。

「この湖は国土地理院の地図には載っていない ”地図にない湖”。創業時から2014年まで約65メートル掘り進めた跡に雨水や地下水がたまってできたんです。年間4メートルずつ水位が上がるので、水を汲み上げ、石の切断などに利用しています」と塙さん。

続いて稼働中の奥山採石場を解説付きで見学できるプレミアムツアーに参加。ミニバンに乗り込み、まずは前山採石場の山頂へ。湖を見下ろすスリル満点の風景を楽しみ、さらに奥へと進む。山のあちこちに転がる白くて大きな石が稲田石だ。

「稲田石は約6000万年前にできた花崗(かこう)岩(御影<みかげ>石)で、10億年前にできた中国のそれと比べると若いため風化しにくいんです。さらに長石(ちょうせき)を60%以上含むため白くて美しく、耐久性があり、日本橋や最高裁判所、東京証券取引所、国会議事堂など国の重要な建造物に採用されました」とガイドの二野宮ゆかりさん。

いよいよ最奥の奥山採石場へ到着。グランドキャニオンさながらの山容は中央アジアの遺跡のようにも見える。山の上部は人力による露天掘りのためギザギザ模様がくっきり。下部は現役の採石場ならではの〝掘りたての白”が印象的だ。現役だけに2度と同じ風景は見られない。

プレミアムツアーで訪れた奥山採石場。日本とは思えない風景が広がる
ダイヤモンド入りのワイヤーで石の切り出し方を説明する二野宮さん。縦横10メートル、高さ5メートルの石 を切り出すのに、24時間通しの作業で3日かかる
作業の様子を見られることも

約1時間のツアーの最後は”地図にない湖”の湖面近くまで下りる。西日が照らす山肌を見上げると水墨画のよう。見る場所や時間でさまざまに表情を変える稲田石。6000万年という悠久の時に思いをはせた。

文/中 文子
写真/依田佳子ほか


石切山脈

ベストシーズン:通年
営業:9時~15時30分/木曜、年末年始休/300円(プレミアムツアーは1000円。3月までは9時30分、11時、13 時30分の1日3回。要予約)
交通:水戸線稲田駅から徒歩20分/北関東道笠間西ICから国道50号経由5.5キロ
問い合わせ:TEL0296-74-2537

※料金等すべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2024年2月号)
(Web掲載:2024年2月10日)


Writer

中 文子 さん

神戸生まれの大阪育ち。学生時代に旅に目覚め、アジア(おもに中国)や国内各地を探訪。旅を仕事にできたら面白そうだ!と旅行読売出版社に入社。広告課、編集部、メディアプロモーション部(広告)を経て、22年4月からメディア編集部所属。現在は、小1の壁と向き合いながら時短勤務中。温泉とお酒、楽器演奏が大好き。

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