【新・日本の絶景】周囲3.8キロの小さな離島 志々島と天空の鳥居 高屋神社(1)
島々の間をゆったり船が行き交うのんびりとした景色に癒やされる志々島の楠の倉展望台(写真/ピクスタ)
瀬戸内の美しい景観を一望小さな離島と天空の鳥居へ
香川県西部、瀬戸内海に浮かぶ志々島(ししじま)は周囲3.8キロの小さな離島。瀬戸内の多島美(たとうび)を望む高台や樹齢1200年以上の大楠(おおくす)など絶景スポットが点在し、探検気分で景観を楽しめるという。志々島行きの船が出航する宮の下港の近く、標高404メートルの稲積(いなづみ)山の頂上に立つ高屋神社本宮には、海や観音寺市街を見下ろせる天空の鳥居がある。瀬戸内の絶景を巡る旅に出た。
志々島へは宮の下港から定期船で20分ほど。志々島港で下りると海辺に色とりどりの小屋が見えた。霊屋(たまや)と呼ばれる志々島特有の墓だ。この景観を見て山田洋次監督は、志々島を映画「男はつらいよ 寅次郎の縁談」のロケ地に決めたという。島には車の姿はなく、のどかでゆったりした時間が流れていた。
大楠への案内板に従ってひなびた人家の間を抜けて行くと、上り坂がきつくなる。途中、志々島港や対岸の起伏に富んだ山並みを望むベンチでひと休み。さらに数分歩いて大楠の看板を右折し、下り坂を歩くこと数分、島のシンボルである雄々しい大楠が現れた。高さ約23メートル、幹の周囲は約12メートルの堂々たる姿。カメラに収めるのも苦労するほどの大きさに圧倒された。
来た道を大楠の看板まで戻り、上ってきた坂を右折して山道を進むと視界が急に開け、島の北側中腹にある楠の倉展望台に着いた。ここには観光客が座って景色を見ながら休憩できるように、島民が建てた木造の素朴な小屋がある。目の前には、青い瀬戸内海と空、大小さまざまな島々や瀬戸大橋の絶景が広がる。時間に余裕があれば、360度の景観を望める島頂上部の横尾(よこぼ)の辻にも立ち寄りたい。
散策の後は、島で唯一の休憩所でもあるカフェ「くすくす」に立ち寄った。定年後に関西からUターンし、船を待つ観光客のために開店したという店主の山地常安(つねやす)さんから島の歴史を聞いた。
「この島は江戸~大正時代はタイやサワラの漁場として漁業が、戦後は防虫菊やキンセンカなど花の栽培が盛んで、最盛期には1000人を超える島民がいたんですよ。ところが過疎化と高齢化が進み、無人島になると言われた時期も。近年は移住者も増えてきて、現在は計17人が住んでいます。花の栽培も一度は廃れましたが、2014年から約1万平方メートルの放棄地を整備したことで、再び『花の島』と呼ばれ、観光客が訪れるようになりました」
港から徒歩15分の高台にある「天空の花畑」は、22年に「全国花のまちづくりコンクール」で国土交通大臣賞に輝いた。島で暮らす髙島孝子さんが家族とともに手入れをするキンセンカやシバザクラ、ネモフィラなどが3月下旬~5月上旬に見頃を迎える。宿泊する場合はゲストハウス「きんせんか」を利用できる。
文/児島奈美
写真/宮川 透ほか
【新・日本の絶景】周囲3.8キロの小さな離島 志々島と天空の鳥居 高屋神社(2)へ続く(2月1日公開予定)
志々島
ベストシーズン:3月下旬~5月上旬
営業:見学自由
交通:予讃線詫間駅からバス20分の詫間庁舎下車後、宮の下港から船で20分/高松道三豊鳥坂ICから宮の下港まで県道220号経由9キロ
問い合わせ:TEL0875-56-5880(三豊市観光交流局)
※料金などは掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年2月号)
(Web掲載:2024年1月31日)