国内外から人が集う広場のような街 麻布台ヒルズ(港区)【東京新スポット】
桜田通りから見た麻布台ヒルズ。周辺には大使館も多く、国際色豊かなエリアだ
「ヒルズの未来形」として誕生した麻布台ヒルズ
2003年の六本木ヒルズ開業は衝撃的だった。新たな街の出現と東京という都市空間のダイナミズムに、心躍ったことを覚えている。あれから20年が経ち、「ヒルズの未来形」として誕生したのが麻布台ヒルズだ。広さは約8.1ヘクタール。オフィスやレジデンス、ホテル、ギャラリー、インターナショナルスクール、医療施設などを有する巨大な街で、商業施設には約150店が集結する。
地下鉄神谷町駅に直結し、地下のセントラルウォークを通じて各施設にアクセスできるが、まずは地上へ。大胆な曲線を描く低層棟や高層タワーを横目に、桜麻(さくらあさ)通りを歩く。緩やかな勾配のある通りは再開発によって生まれ、桜田通りと麻布通りをつないでいる。開発前は路地が多く木造住宅が密集していたというから、災害の多い昨今、安心して集える街に変貌を遂げたと言えるだろう。
街の中心に据えられた中央広場に立てば、最大の魅力は緑だと実感する。緑地化は1986年開業のアークヒルズ以来、ヒルズブランドの特徴だが、緑地面積は約2.4ヘクタールと突出。広場の南にそびえる約330メートルの森JPタワーが高さ日本一のビルとなったのは、緑地確保のためだとか。約320種の植栽は地形の高低差を生かして配され、街の入り口には桜のゲートもある。季節が巡っていくのも待ち遠しい。
さて、初めての旅先ではその街の高所と書店を訪ねることにしている。おすすめは森JPタワー33階の「Dining(ダイニング)33」。東京タワーを間近に望みつつランチを楽しみ、緑あふれる街並みを見下ろしてみたい。
続いてタワープラザ4階の大垣書店へ。本棚の間に腰掛けがあるなど居心地のいい空間だ。「近隣から書店が減っている現状を何とかしたくて」出店を決めたそうで、「街には書店が必要だという森ビルさんの考えにも共感しました」と副店長の大垣交右(こうすけ)さん。街の魅力を「毎日通っても、違うルートで探索すると新たな発見がありますね」と教えてくれた。
今春には、中央広場の地下にマーケットがオープンする。商店会ができ、マーケット内のスペースや街の菜園、広場などで食のイベントが行われると、人のつながりや街のにぎわいも増しそうだ。
森JPタワーを出て外苑東通りを渡れば鼬(いたち)坂。坂を下ると「島崎藤村旧居跡」と刻まれた石碑がある。藤村は「飯倉附近」と題した随筆の中で、周辺の風景を愛着たっぷりに綴(つづ)っている。新たな街に集う人々は、これからどんな物語を紡いでいくのだろうか。
文/内山沙希子
森ビル デジタルアートミュージアム:エプソンチームラボボーダレス
森ビルとアート集団・チームラボが手がけ、お台場で約230万人を動員したアート空間が移転。世界初公開の《Bubble Universe》と《マイクロコスモス-ぷるんぷるんの光》を含む作品群が空間から空間へと境界なくつながる。日時予約制。3800円〜。
公式サイトはこちら
麻布台ヒルズ マーケット
約4000平方メートルの大規模マーケットが位置するのは中央広場の地下。総菜やグロッサリー、ベーカリー、スイーツなど34の専門店が並び、店舗によってはイートインスペースもある。
営業:レストラン&マーケット11時~23時、ショップ11時~20時(店舗により異なる)/無休
交通:地下鉄日比谷線神谷町駅5番出口直結。地下鉄南北線六本木一丁目駅2番出口から徒歩4分
問い合わせ:TEL:03-6433-8100
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年4月号)
(Web掲載:2024年4月28日)