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ホテル評論家・瀧澤信秋さん注目の「オンリーワンの宿」

場所
> 西海市、札幌市、京都市、盛岡市
ホテル評論家・瀧澤信秋さん注目の「オンリーワンの宿」

観光の盛り上がりに呼応して宿泊施設は増え続け、ホテルの活況と増加は競合をもたらし差別化を生んできた。常に新しいデザインやコンセプト、ほかにない話題性が求められる業界だ。思えば、コロナ禍前のインバウンド活況から、アフターコロナの観光回帰へというフェーズは、“オンリーワン”が増える土壌ともいえる。いま「オンリーワンの宿」は大いに注目すべき視点なのだ。

個性的な宿泊施設といえば、独自のコンセプトで趣味(乗り物やアニメ、音楽)などにフォーカスした「コンセプトルーム」が思い浮かぶ。これは「ルーム」という通り、ホテルの数室を大胆にリノベーションしたものであり、最近は鉄道コンセプトがさらに極まり、実物の車両の一部と運転台を客室に設置するケースもある(「レフ松山市駅 by ベッセルホテルズ」の伊予鉄ルーム)。

コンセプト性を“宿全体”に持たせることでターゲットを明確に

他方、オンリーワンの宿はほかにないコンセプト性を“宿全体”に持たせることでターゲットを明確にし、より差別化を図っている。例えば、人気テーマパークにあるキャラクターをイメージしたホテルがわかりやすい。また希少な名建築の宿も、そこにしかない体験ができる場所といえる。2026年春開業予定の「星のや奈良監獄」は、1908(明治41)年に完成した“明治の五⼤監獄”の一つである「旧奈良監獄」(国の重要文化財)を活用し、ラグジュアリーな滞在を提案する。

ここまで振り切ってはいないが、オンリーワンの宿はまだまだある。造船のまちとして知られる長崎・大島の「オリーブベイホテル」(長崎県西海市)は、大島造船所が迎賓館として建てたホテルであり、年に数回船の引き渡し式に出席する船主らが利用するが、世界のVIPが訪れる贅(ぜい)を尽くしたホテルに宿泊できる。一度は訪れたいリゾートホテルという点からも“オンリーワンの体験”だ。

オリーブベイホテルは全32室から湾を眺める。ホテルの設計は隈研吾氏

サッポロビールの関連会社がオーナーの「ホテル創成札幌 Mギャラリーコレクション」(北海道札幌市)は今年1月、“日本人の手による日本のビール発祥の地”である創成イースト地区に開業した。「21世紀に生まれ変わる開拓使時代の邸宅」 をテーマに、当時の開拓者たちが見た光景を現代的に再構築した、ハイセンスな外資系ラグジュアリーホテルとして注目されている。

ホテル創成札幌 Mギャラリーコレクションのバー

差別化の波は京町家にまで密かに波及している。壁からキッチンまで和紙尽くしの「鈴 京都宮川筋hitotose 穐(あき)-Aki-」(京都市東山区)は今年3月に開業した。まるごと1棟約180平方メートルを利用でき、プライベートサウナから露天風呂にエレベーターまで付いている突き抜けたラグジュアリー町家だ。

和紙をふんだんに使った「鈴 京都宮川筋 hitotose 穐 -Aki-」の客室

アートや音楽にフォーカスしたホテルもオンリーワンの要素がある。例えば、盛岡バスセンターに併設する「ホテルマザリウム」(岩手県盛岡市)はジャズとアートに浸れるホテルとして人気だ。福祉実験ユニット「ヘラルボニー」がアートプロデュースする初の常設ホテルで、知的障害のある8人の作家がアートルームを手がけた。ジャズピアニストの穐吉(あきよし)敏子ジャズミュージアムも併設し、ラウンジやカフェでジャズに浸れる独特の空間だ。

ホテルマザリウムのアートルーム

今後も新たな開業が見られるだろう「オンリーワンの宿」。オンリーワンだけに増えるほどに“オンリーの可能性”は削がれていくかと思いきや、その勢いは衰えることを知らない。オンリーワンの宿の可能性はこれからも増していくだろう。

文/瀧澤 信秋


※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出展:「旅行読売」2024年6月号)
(Web掲載:2024年7月24日)


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