「界 出雲」から神話の世界へ【ひとり旅】
灯台側客室。夕日が鮮やかに感じられる藍色のリビングが特徴
海辺の夕日、神楽、そして朝日が神々しく……
沈みゆく夕日を眺めるにしても、日の出を待つにしても、ひとり旅なら気兼ねなく贅沢(ぜいたく)に時間を使えるというものだ。島根半島の西端、日本海に突き出す日御碕(ひのみさき)は、その名のとおり古くから「日」に縁のある岬として知られ、出雲神話の舞台として日本遺産「日が沈む聖地出雲」の構成文化財になっている。出雲日御碕灯台のそばに立ち、夕日や朝日の絶景とともに過ごせるのが星野リゾートの温泉旅館「界 出雲」である。
2022年11月に開業し、コンセプトは「灯台と水平線を望むお詣(まい)り支度(じたく)の宿」。日本の夜を守るとされる日御碕神社までは徒歩5分、出雲大社までは車で20分という立地だ。航空券付き宿泊プランがあるので、出雲空港からレンタカーで向かうと周辺観光にも便利だろう。
「彩海(さいかい)の間」と名付けられた39室の客室は、刻々と移り変わる海や空の色合いを楽しめるようデザインされている。夕日を望む灯台側と朝日を望む海側に分かれ、いずれもひとり泊が可能。「朝日を眺めるなら『かわたれテラス』や大浴場の露天風呂もおすすめです」と総支配人の片山航(わたる)さん。館内2階のトラベルライブラリーに併設されたテラスの名は、「彼(か)は誰(たれ)時」つまり明け方の情景の美しさを意味する。まずは日の入り、日の出の時刻を確認してから、宿での過ごし方を決めたい。
大浴場は複雑な海岸線に大小の島が浮かぶ出雲松島に臨み、禊(みそぎ)の湯にぴったりの強塩泉が満ちている。夕食で「出雲の旬会席」を味わったら、21時30分からは石見(いわみ)神楽を鑑賞。もともとは豊穣(ほうじょう)を祈願するための神事が、石見人の気質に合った軽快で勇壮な舞として民衆に広がっていったそう。演目は「国譲り」。「神楽を通して出雲大社の成り立ちを知ることで、出雲の旅がより豊かなものになれば」と片山さんは話す。篝火(かがりび)を背に神々の戦いが繰り広げられ、神話の世界へと引き込まれた。
翌日はいよいよ出雲大社へ。「出雲大社ガイド付きツアー」を専用プランで申し込んでおくと、参加者には朝食時に「神饌(しんせん)朝食」が提供される。神様に献上する食事を模しており、神様との強い縁を祈願するものだという。ツアーは1時間か2時間のコースから選択。ガイドとともに境内を回り、稲佐(いなさ)の浜まで歩く。神々が降り立つ浜で旅を締めくくろう。旅程にゆとりがあれば玉造(たまつくり)温泉の「界 玉造」にも泊まって、出雲との縁をさらに深めたい。
文/内山沙希子
世界の灯台100選の一つで、灯塔の高さは43.65メートと日本一。真っ白な石積みの外観が美しく、163段のらせん階段を昇ると眼下に海景が一望できる。2022年に国の重要文化財に指定された。
■9時~16時10分(3月〜9月の土・日曜、祝日は~16時40分)/無休/参観寄付金300円/山陰線出雲市駅からバス1時間、日御碕灯台下車徒歩5分/TEL:0853-54-5341
【ひとり泊データ】
通年可/1泊2食4万5250円~/トイレ付き43平方メートルトリプルなど
住所:出雲市大社町日御碕604
交通:山陰線出雲市駅からバス1時間、日御碕灯台下車すぐ/山陰道出雲ICから18キロ
問い合わせ:TEL050-3134-8092(界予約センター)
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2024年5月号)
(Web掲載:2024年6月15日)