【車窓に春風 お花見列車】 わたらせ渓谷鐵道 相老~塙~神戸~通洞

咲き競う花桃と桜に包み込まれた神戸駅構内をトロッコわっしー号が駆け抜ける
渓谷沿いを行く列車の窓を色とりどりの花桃が染める
足尾銅山の物資輸送を目的とした足尾線を引き継いだわたらせ渓谷鐵道は、鉄道利用客を増やそうと寄付を募り、2000年に神戸(ごうど)駅で花桃を植樹した。この木々は大きく育ち、今や立派な〝桃源郷〟となった。今回は神戸駅のほか、沿線にある花桃スポット巡りとトロッコ列車からの花見旅を紹介したい。
旅のスタートは東武線との連絡駅である相老(あいおい)駅から。駅窓口で1日乗車券を購入し、普通列車に乗車した。大間々(おおまま)駅を出てほどなく車窓に渡良瀬川が見えてくる。開業当時のたたずまいを今に残す上神梅(かみかんばい)駅では、線路沿いの桜が迎えてくれた。小さなホームを桜が包み込む本宿(もとじゅく)駅を過ぎ、水沼駅に着く直前には黒保根(くろほね)運動公園に咲くたくさんの桜と花桃が目に飛び込んできた。
花桃が咲き誇る花輪駅で下車し、徒歩で小夜戸(さやど)・大畑花桃街道へ。駅から渡良瀬川を渡った対岸にある小夜戸・大畑集落では、民家の軒先等に植えられたしだれ花桃が咲き乱れ、訪ねてくる人を癒やしてくれる。

40年ほど前、桐生市内の病院に入院していたこの地域の住民が、隣のベッドの人からもらった花桃の苗木を自宅の庭に植えたのがきっかけで、その後、近隣の人々の庭や道端にも増やしていったという。今は、地元の人からなる「大畑しだれ桃の会」を中心に植樹・管理を行い、行政の協力もあって、地域全体を彩るまでになった。

花輪駅へ戻り、再び列車に乗って神戸駅を目指す。駅周辺の花桃は約300本。レトロな雰囲気の駅舎と相まって、ふるさとのような懐かしさがあった。上りホームの反対側に留置された東武鉄道旧1720系デラックスロマンスカーの車両で営業する列車のレストラン清流では、舞茸ごはん定食などが食べられる。弁当を購入して、花の下で味わうのもいい。


同社社長の品川知一さんは「花の駅・神戸駅は赤と白の花桃が咲く桃源郷です。時期が合えば、桜との競演も見られます。ぜひ列車に乗って、社員が育てた花桃を見に来てください」と話す。
花見を堪能した後は通洞(つうどう)駅へ。足尾銅山観光に立ち寄り、帰りはトロッコわたらせ渓谷号のオープンデッキからお花見を楽しもう。春風が運んで来る花の香りを感じながら眺める渡良瀬川は、ひと味違った趣が感じられた。
文・写真/越 信行

列車のレストラン清流

列車のレストラン清流は、東武特急けごんの廃車体を活用したレストラン。現役当時そのままの客室で食事ができる。
■11時~16時/無休(12月~3月は月曜休、祝日の場合は翌日休)/神戸駅構内/TEL0277-97-3681
※ホームページはこちら
お花見列車/トロッコわたらせ渓谷号
3月22日〜の土・日曜を中心に運転。3月第5週、4月第1・2週は火・木・金曜も運行予定。TEL0277-72-1117(わたらせ渓谷鐵道大間々駅)
神戸駅花桃まつり
2025年3月22・23日 の10時~15時。TEL0277-73-2110
はなわ・はなもも花火大会
2025年4月13日の19時~、花輪渡良瀬川河川敷で。TEL090-9006-6165(同大会本部)
※料金などは掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2025年4月号)
(Web掲載:2025年3月12日)