【取り寄せできない東京・大阪みやげ】空也もなか 空也(東京・銀座)

購入当日の香ばしさもいいが、種と餡がなじんでくる2~3日後が一番の食べ頃という
種と餡が一体となる唯一無二の銀座の味
東京を代表する街の一つ、銀座。洗練された文化の香りが漂い、最新のファッションやグルメなどを牽引(けんいん)する商業施設も多く、新旧がほどよく共存する魅力がある。名だたる老舗、名店が並ぶ中、140年の歴史を誇る和菓子店が「空也(くうや)」である。
上野・池之端で創業した同店は、夏目漱石ら文化人に愛された店として知られる。戦火のため1949年、銀座6丁目の並木通りに移転。銀座が商業地として発展する歴史とともに歩んできた。そして驚くことに、現在も脈々と店内で餡(あん)を炊き、上生菓子を手作りし、 〝銀座メイド〟の菓子を生み出している。なかでも看板商品が「空也もなか」である。
海外ブランドの高級店が並ぶ並木通りにたたずむ店舗。午後には売り切れの紙が貼り出されることもしばしば
歴史を感じさせる、こぢんまりとした店内
「老舗といわれますが、良い素材を使い、日々丁寧に、しっかり菓子と向き合うことを積み重ねてきただけです。その日に作った菓子をその日に売り切る。昔ながらのスタイルの和菓子店が銀座にあるというだけのことです」と話すのは、5代目当主の山口彦之(ひこゆき)さん。
空也もなかは1日8000個しか作らない。これはスタッフが無理せず働くための限度数という。ゆえに、予約数が8000個に達した日は当日の販売はしないため、確実に入手したいなら予約が必須なのだ。これを手土産にすれば、誰もが満面の笑みを浮かべること間違いない。
空也もなかの形は、屋号に由来する空也上人の杖(つえ)に付いていた瓢箪(ひょうたん)をモチーフにしている。種(※)にはこんがり香ばしい焼き色があるが、これは初代が懇意にしていた歌舞伎役者の9代目・市川團十郎に、火鉢で炙(あぶ)った最中を勧められ、そのおいしさに感じ入ったことによるという。
※最中の皮
空也もなか10個化粧箱入り
ぎっしり並ぶ作りたての空也もなか
5代目の山口彦之さん。若い世代に訴求する別ブランド「空いろ」も展開
種は創業時からの付き合いがある日本橋・茅場町の専門店「種萬」が製造。糯(もち)米100%の焦がし種が、北海道産エリモ種の小豆をザラメ糖で炊いた、すっきりと上品な甘さの餡をやさしく包む。買い求めた当日は種の香ばしさが極立つが、翌日は種と餡がほどよくなじみ、しっとりとした歯応えと、ふくよかな餡の風味が口の中で一体となる。
ベテラン職人により朝7時から仕込みが始まり、煮釜で1時間ほど炊いて餡が完成
原料の小豆は北海道産のエリモ種
「帰省のお土産やご挨拶(あいさつ)、お祝いのお遣い品として購入いただくことが多いのが空也もなかです。お客様が手土産に込める大切な想いに常に寄り添っていきたいと思っています」と話す山口さん。多くの贔屓(ひいき)客が支持する唯一無二の銀座の味である。
蒸し器にセットされる蕎麦(そば)まんじゅう
和菓子は一つ一つ丁寧に手作りされる。季節の上生菓子は6種、取材した12月は「黄味瓢(きみひょう)」「羊羹(ようかん)」など
冬のおすすめ(取材時)
(左から)松(12月中旬〜1月中旬)こし餡を包んだ抹茶の練切(ねりきり)350円、薯蕷(じょうよ)まんじゅう(12月中旬〜1月)風味豊かでもっちりとした皮とこし餡 250円、うぐいす(12月中旬〜1月)香ばしいきなこがたっぷり 250円
空也もなか
◎10個化粧箱入り1200円
◎10個自家用箱入り1100円
<賞味期限>1週間
<購入方法>当日販売する日もあるが電話での予約が確実
※記事中の価格などはすべて取材時のデータです
【空也】
住所:中央区銀座6-7-19
TEL:03-3571-3304
■10 時~ 17 時(土曜は~16 時)/日曜、祝日休/地下鉄銀座線ほか銀座駅B5出口から徒歩5分
※公式サイトはこちら
文/関屋淳子 写真/三川ゆき江
(出典:旅行読売2025年1月号)
(Web掲載:2025年4月23日)