【私の初めてのひとり旅】登坂淳一さん 和歌山、大阪、北海道(2)

北海道では農家の田植えを手伝った経験も
とさか・じゅんいち[フリーアナウンサー]
1971年、東京都生まれ。97年にNHK入局。和歌山をはじめ、大阪、東京、北海道、鹿児島の各放送局で勤務。2018年に退局してフリーアナウンサーに。テレビのアナウンサーやキャスターのほか、バラエティー番組などにも出演。22年にはCS放送のドラマ「スパイめし~異国グルメ潜入記~」で初主演。ブログ「白髪のパパ」では3歳と2歳の愛(まな)娘の成長と日常生活を発信中。
お好み焼き、たこ焼き……きつねうどんも堪能
【私の初めてのひとり旅】登坂淳一さん 和歌山、大阪、北海道(1)から続く
4年目に大阪放送局に異動しました。御堂筋や天神橋筋商店街を歩き回り、地図に付箋(ふせん)を貼って、見たり感じたりしたことを書き記しました。船場(せんば)には価値ある近代建築が数多く残り、北浜の大阪証券取引所前には、設立に尽力した明治の実業家、五代友厚(ごだいともあつ)の像が立っています。その時は何も感じませんでしたが、10年後に再び異動で大阪へ来た時、ドラマ「マッサン」を見て納得しました。
食い倒れと言われる大阪は「安い、うまい」が基本。私も粉ものが好きでお好み焼きやたこ焼きも食べましたが、おすすめは上司に教えてもらった「道頓堀今井」のきつねうどん。薄味だけどコクとうま味がしっかりと利いて「これぞ大阪!」という味です。関西で6年暮らして味覚もだいぶ変わりました。
2010年、北海道赴任の初年に北海道大学で米の食味試験を取材した時、私も食べ比べました。その中の一つがびっくりするほどおいしくて、銘柄を聞いたら「ゆめぴりか」でした。私の中で米は新潟という勝手なイメージがあったので、「北海道でこんなにおいしい米が!」と驚きました。その後、北海道の稲作の歴史を調べたり生産者に取材したりして企画書を作り、3年目に放送できました。取材した深川市の農家と親しくなり、田植えの手伝いなどもしました。
北海道には人気グルメはもちろん、観光名所も多数あります。当時はまだ知る人ぞ知る存在だった美瑛(びえい)の「青い池」は、本当に神秘的で、あの青さをどう表現したらよいか……。立ち枯れのカラマツ林と相まって、実に幻想的な風景でした。
美瑛の青い池の美しさは感動的だった
在局中は北海道から鹿児島まで単身で赴任しました。数日間の旅行と数年間暮らす赴任とは違いますが、私の感覚としては終わらない旅を続けているようでした。知らないだけで、素敵な場所は日本中にあると思います。それを一つでも多く味わえたらいい。娘たちにもできる限り見せてあげたいですね。
話/登坂淳一 聞き手/田辺英彦
(出典:「旅行読売」2025年2月号)
(Web掲載:2025年5月2日)