【低山と温泉へ】弘法大師が修行したという伝説が残る弘法山<標高235m・歩行距離7.5キロ・歩行時間2時間9分>

権現山山頂の展望台からは、秦野市街と丹沢の山々、そして富士山の大パノラマが楽しめる
四つの山頂を巡り眺望と尾根歩きを楽しむ
「楽しく尾根歩きがしたい!」
そんな気分で向かったのは、神奈川県秦野(はだの)市の弘法山(こうぼうやま)。弘法大師が修行したという伝説が残る信仰の山だ。周辺には大師ゆかりの史跡が点在している。浅間山(せんげんやま)、権現山(ごんげんやま)などが連なり、「弘法山公園」として整備されている。
小田急線秦野駅をスタート。駅の近くには、今もコンコンと湧き出る「弘法の清水」がある。湧水(※)はまろやかでおいしく、水筒にたっぷり補給した。
金目川(かなめがわ)に架かる橋を渡り、登山口へ。最初の目的地は標高196メートルの浅間山だ。いきなり九十九(つづら)折りの急な階段道が続き、じわじわと足にくる。でも、途中で木々の間から富士山がチラリと顔を出すと、「よし、頑張ろう!」と闘志が湧いてくる。山頂に着くと、眼前に富士山の絶景が広がった。最初の試練を乗り越えたご褒美のような眺めに、しばし足を止めて深呼吸した。
※湧水は自然のままの水で殺菌処理などされていないため、水筒に雑菌が入ると腐ることがあります。
秦野駅から登山口へ向かって、水無(みずなし)川沿いの道をたどる。浅間山がよく見える
次はコース最高峰・標高243メートルの権現山へ向かう。なだらかな尾根道が続き、木漏れ日を浴びながらのんびり歩ける。権現山の山頂は広々としており、大きな展望台から丹沢の山並みや江の島、相模湾の彼方に房総半島まで一望できる。360度の大パノラマに、思わずため息が漏れる。ここで駅近くのパン屋「サンパシー」で買い求めておいたパンを取り出し、ランチタイム。地元で人気のパンと名水のセットが、疲れた体に染み渡る。
「サンパシー」のハムカツサンド(280円)とチーズフランス(220円)。どちらもボリューム満点
お腹が満たされたら、「馬場道」と呼ばれる真っすぐな道を歩く。以前はここで草競馬が行われていたとか。歴史に思いをはせながら、稜線(りょうせん)伝いの山道を進み、標高.235メートルの弘法山の頂にたどり着いた。大師堂や鐘楼があり、厳かな雰囲気が漂う。「乳の井戸」と呼ばれる井戸は、現在は使われていないようだ。それでも、このコースにはいくつか水場があり、水分補給には困らない。
弘法山山頂のウッドデッキは2024年に新設されたばかり
弘法大師像が収められた大師堂。近くには「乳の井戸」がある
弘法山公園はここまでで、その先はゆっくりと下りていく。標高125メートルの吾妻山(あづまやま)山頂からは平塚や茅ヶ崎の街並みが見渡せる。下界が近づいてきた感じもあり、やや名残惜しい。最後は一気に下って鶴巻温泉へ。「さあ、温泉に入ってリラックス!」。弘法の里湯で疲れた足を湯に浸しながら、今日のハイキングの道のりを振り返る。歩きやすいルート、素晴らしい眺望、そして温泉。充実感にも浸った。
文・写真/阪口 克
美しい雑木林の尾根道を歩き、吾妻山へ向かう
アドバイス
4月末〜6月の新緑期がハイキングには最適。3月末~4月上旬の桜のシーズンは花見客でにぎわう。休日の駐車場はとても混むので電車利用を。ルート上には水道やトイレも整備されている。
弘法の里湯 ◉鶴巻温泉
二つの源泉を持つ市営の日帰り温泉施設。カルシウムを多く含む弱アルカリ性の湯で体の芯まで温まり、ハイキング後の疲れを癒やせる。露天風呂やサウナのほか、レストランもある。せいろそば700円。ヒレカツ丼1280円。
■10時~20時/月曜(祝日の場合は翌平日)休/2時間800円、1日1000円(平日)、2時間1000円(土・日曜、祝日)/秦野市鶴巻北3-1-2/小田急線鶴巻温泉駅から徒歩2分/TEL:0463-69-2641
【登山データ】
■交通 [鉄道]新宿駅から小田急線ロマンスカーで1時間、秦野駅下車[車]東名高速秦野中井ICから県道71号経由2.5キロ( P無料あり)
■問い合わせ/TEL:0463-82-8833(秦野市観光協会)
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2025年6月号)
(Web掲載:2025年5月10日)