たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

【夜行列車の旅】サンライズ出雲 日本海沿いを走り、“神話の里” 出雲へ 東京-出雲市(1)

場所
【夜行列車の旅】サンライズ出雲 日本海沿いを走り、“神話の里” 出雲へ 東京-出雲市(1)

島根県と鳥取県の境にある広大な湖、中海に沿って走る「サンライズ出雲」(写真/ピクスタ)

夜の街を抜け、中国山地を越え、日本海を望む“神話の里”へ

入線のアナウンスが流れると、ホームに並んでいた老夫婦が、うれしそうに顔を見合わせた。ビールとつまみでパンパンの袋を提げた70代と思(おぼ)しき男性4人組は、まるで修学旅行のようにはしゃいでいる。

ライトの明かりが近づいてくると、乗客がいっせいにスマートフォンを向け、車体が目の前に滑り込む瞬間には、拍手でも起こらんばかりの高揚感がホームに充満した。こんなにわくわくしながら列車を迎えたのは何十年ぶりだろう。

「サンライズ瀬戸・出雲」は21時50分に東京駅を出発。翌朝、岡山駅で切り離され、「瀬戸」は四国へ、「出雲」は中国山地を縦断し、10時に島根県の出雲市駅に着く。

④ 250417-19_085.jpg
東海道線が発着する東京駅の9・10番線ホームから発車。出発時刻の約30分前に入線する

2+3+5.jpg

予約したのは「サンライズ出雲」のシングル。A寝台個室のシングルデラックスから大部屋のノビノビ座席と6種ある客室の中で、最もポピュラーな1人用B寝台個室だ。

発車のベルが鳴り、列車は都会のビル街をゆっくり進む。寝台のすぐ横の大きな窓の向こうを、夜の景色が通り過ぎる。見慣れたはずの新橋の飲み屋街が、いかにも叙情たっぷりに見えるから不思議だ。車内の様子は外から丸見えなので、シェードを半分下ろして、駅弁をつまみにちびちび飲む。

⑥ 250417-19_175.jpg
シングルのベッドの横幅は70センチ、縦幅は196センチ。横に荷物置きがあるだけのコンパクトな造り

⑦ 250417-19_236.jpg
乗車後間もなく検札がある

⑧ 250417-19_307.jpg
東京駅改札内の「駅弁屋 祭」で購入した「ずわいかに海鮮御膳」1390円。売り切れが多いので、早めに購入したい。地下1階では多種のワインや日本酒も販売。車内販売はないので食べ物と飲み物の持参は必須

聞こえるのはガタゴトと列車の走る音だけ。夜行列車の個室は、物思いにふけるのには最適のようだ。寝静まった街に灯る街灯、所々に現れる薄明りの漏れる家の窓。そんな光景を眺めながら、いろんな人生があるんだろうなあ……などと、柄にもなくしみじみとした気分になる。

時折通過する人けのない東海道線の駅のホーム、煌々(こうこう)と光を放つコンビニ、天候によっては星空も望めるだろう。夜の車窓はずっと見続けても飽きることがない。1時過ぎ、浜松駅で交代の駅員さんが乗り込むのを見て、眠りに就いた。

文/高崎真規子 写真/青谷 慶

【夜行列車の旅】サンライズ出雲 日本海沿いを走り、“神話の里” 出雲へ 東京-出雲(2)へ続く(9/2公開)

⑫ 250417-19_361.jpg
部屋着は膝丈なので、ジャージなどがあると便利。歯ブラシとタオルは持参したい

⑪ 250417-19_465.jpg
シャワーカード330円の券売機。すぐに売り切れてしまうので要注意

モデルコース.jpg

サンライズ出雲

運転日 毎日

運行区間 東京―出雲市(1日1往復)
※お盆、年末年始には臨時便あり

料金 運賃+特急料金+寝台料金(ノビノビ座席は寝台料金不要、指定席530円[通常期])
※東京―出雲市間の片道料金=「シングルデラックス」2万9490円、「シングル」2万3210円、「ソロ」2万2110円、「ノビノビ座席」1万6040円など

販売 駅の指定席券売機およびみどりの窓口、えきねっと、主な旅行会社など


※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2025年8月号)
(Web掲載:2025年9月1日)


Writer

高崎真規子 さん

昭和の東京生まれ。80年代後半からフリーライターに。2015年「旅行読売」の編集部に参加。ひとり旅が好きで、旅先では必ずその街の繁華街をそぞろ歩き、風通しのいい店を物色。地の肴で地の酒を飲むのが至福のとき。本誌連載では、大宅賞作家橋本克彦が歌の舞台を訪ねる「あの歌この街」、100万部を超える人気シリーズ『本所おけら長屋』の著者が東京の街を歩く「畠山健二の東京回顧録」を担当。著書に『少女たちはなぜHを急ぐのか』『少女たちの性はなぜ空虚になったか』など。

Related stories

関連記事

Related tours

この記事を見た人はこんなツアーを見ています