【夜行列車の旅】サンライズ瀬戸 寝る間も惜しい、9時間30分の旅 東京-髙松(1)

出発の20分前、東京駅に入線する「サンライズ瀬戸・出雲」。高層ビル群に見送られ、一路、西を目指す
月が星がきらめく闇夜を疾走し、輝く瀬戸内海を渡り四国へ
東京駅9番線ホーム、21時30分。帰宅を急ぐ人々の波は日常のひとコマだ。高層ビルの明かりを見上げる人もいない。目の前の線路が四国まで続いていると想像する人もいないだろう。そんな日常の片隅で今、高松駅行きの寝台特急「サンライズ瀬戸」の入線を待っている。これから約800キロ、約9時間30分の旅が始まる。非日常を前に胸が騒いだ。
見渡せば同好の士の姿があった。リュックを背負い、スーツケースを携え、駅弁だろうか買い物袋をぶら下げ、乗車口を探している。日常とハレの日が入り混じった不思議な空間が、毎日この時間、この場所に出現するのだ。
車両は朝焼けや朝もや、日の出をイメージしたカラー
「サンライズ瀬戸」が運行を始めたのは1998年7月。東京―高松駅間を1日1往復し、岡山駅までは「サンライズ出雲」と併結運転する。2016年に急行「はまなす」が運行を終了したため、唯一の定期運行寝台列車・夜行列車となった。それゆえ人気が高く、きっぷを入手するのも困難だ。
今回入手できたきっぷ
今回は幸運にも、シングルデラックスのきっぷを入手できた。5種ある個室のうち最上級の部屋だ。列車に乗り込み、さっそく設備を確認する。ドアを開けてまず驚いたのはその広さだ。窓際に長さ196センチ×幅85センチのベッドがあり、大型デスク、イス、洗面台も備えビジネスホテルのシングルルームにも負けない設えだ。豊富なアメニティーに加え、シャワーカードも付いている。2階建て車両の2階にあるため、弧を描いて天井まで届く大きな窓からの眺めも爽快だ。「寝台列車は窮屈」という古い概念が一気に吹き飛んだ。
文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝
【夜行列車の旅】サンライズ瀬戸 寝る間も惜しい、9時間30分の旅 東京-髙松(2)へ続く(8/26公開)
4号車2階に6室あるシングルデラックス。洗面台も備え、ベッドは線路に対して平行。右手にデスクとイスがある
シャンプー、リンス、せっけん、洗顔料、化粧水、整髪料、歯ブラシなどに加え靴磨きまであるアメニティー
4号車にはシングルデラックス利用者専用のシャワールームがある
夜の車窓
サンライズ瀬戸
運転日 毎日
運行区間 東京―高松(1日1往復)
料金 運賃+特急料金+寝台料金(ノビノビ座席は寝台料金不要、指定席530円[通常期])
※ 東京―高松間の片道の料金=「シングルデラックス」2万8930円、「シングル」2万2650円、「ソロ」2万1550円、「ノビノビ座席」1万5480円など
販売 駅の指定席券売機およびみどりの窓口、えきねっと、主な旅行会社など
※記載内容は掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2025年8月号)
(Web掲載:2025年8月25日)