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【夜行列車の旅】サンライズ瀬戸 寝る間も惜しい、9時間30分の旅 東京-髙松(2)

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【夜行列車の旅】サンライズ瀬戸 寝る間も惜しい、9時間30分の旅 東京-髙松(2)

瀬戸大橋にさしかかると、「遠くまで来たなあ」という思いもひとしお。と同時に、もうすぐ夜行列車の旅が終わることが惜しまれた

静かな夜も忙しい朝も思い出に

【夜行列車の旅】サンライズ瀬戸 寝る間も惜しい、9時間30分の旅 東京-髙松(1)から続く

列車は定刻の21時50分に発車。新橋、品川、横浜……。都会の夜景を見送るうちに、次第に闇が深くなる。それでも何かを見つけたくて、車窓に釘付けになる。小田原辺りで、海原が見えた。

日付が変わると、通過待ちの列車を追い越すことも、列車とすれ違うこともなくなってくる。終電の後も、ホームには煌々(こうこう)と明かりが灯っていることに気付いた。家々ではもうみんな眠りに就いているだろう。無人のホームも朝には人々が戻り、いつもの日常が始まる。

浜松駅_5221.jpg
乗務員交代のために停車するが、ホームは無人。夜行列車ならではのシーンに出合えた

闇に包まれ車外の景色が見えない分、想像が頭の中を駆け巡り、線路との対話に浸った。文字にすれば「ガタンゴトン」だが、そんなに単純なものではない。「継ぎ目の音が少ないからこの辺りはロングレールか。快適だな」「急に継ぎ目が多くなって少し揺れるな。ポイント通過か。駅が近いのか」……。感覚を研ぎ澄ませ、少ない情報から想像を膨らませているうちに、いつしか眠りに落ちていた。夜空に輝く満月が最後の記憶だった。

夜の個室_5097.jpg
初夏のおぼろ月夜に乾杯! 月をこんなにじっくり眺めたのはいつ以来だろう?

起床は夜明けの光が助けてくれた。海が近く、まぶしい。兵庫県の須磨(すま)辺りの海だ。夜とは打って変わって朝は情報量が多く忙しい。岡山駅で「サンライズ出雲」との切り離し作業が見られるが、停車時間は短いのでご注意を。

11.岡山駅_7323.jpg
ここまで併結して走ってきた「サンライズ出雲」と別れる。瀬戸は海を渡り四国へ、出雲は“神話の里”へ向かう

13.寝台車内_7609.jpg
ノビノビ座席がある車両の通路。かつての夜行列車に比べて格段に現代的な設備で快適だ

ハイライトは瀬戸大橋通過だ。橋梁(きょうりょう)部約9キロ、瀬戸内海、小島、大小の船を見下ろしながら、「世界一長い鉄道道路併用橋」を8分ほどで渡る。夕暮れ時ではないが、あの名曲「瀬戸の花嫁」が脳裏で流れる。時期によっては朝日を拝める。まさにサンライズ。長旅を共にした乗客への、最高のご褒美(ほうび)だ。

ほどなく終点の高松駅に到着。長くて短い夜行列車の旅だった。朝食は讃岐(さぬき)うどんしか思いつかない。さあ、四国の旅を始めよう。

文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝

15.高松駅到着_7668.jpg
長旅を終えてひと息つく「サンライズ瀬戸」。14時間後には東京へ向かって出発する。また会おう!

14.めりけんや肉うどん_8473.jpg
7時から営業している「めりけんや高松駅前店」の「肉釜玉うどん」(小630円)

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サンライズ瀬戸

運転日 毎日

運行区間 東京―高松(1日1往復)

料金 運賃+特急料金+寝台料金(ノビノビ座席は寝台料金不要、指定席530円[通常期])
※ 東京―高松間の片道の料金=「シングルデラックス」2万8930円、「シングル」2万2650円、「ソロ」2万1550円、「ノビノビ座席」1万5480円など

販売 駅の指定席券売機およびみどりの窓口、えきねっと、主な旅行会社など


※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2025年8月号)
(Web掲載:2025年8月26日)


Writer

渡辺貴由 さん

栃木県栃木市生まれ。旅行情報誌制作に30年近く携わり、全国各地を取材。プライベートではスケジュールに従った「旅行」より、行き当たりばったりの「旅」が好き。温泉が好きだが、硫黄泉が苦手なのが玉に瑕(きず)。自宅では愛犬チワワに癒やされる日々。

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