たびよみ

旅の魅力を発信する
メディアサイト
menu

【夜行列車の旅】サンライズ出雲 日本海沿いを走り、“神話の里” 出雲へ 東京-出雲市(2)

場所
【夜行列車の旅】サンライズ出雲 日本海沿いを走り、“神話の里” 出雲へ 東京-出雲市(2)

岡山駅で7分間停車。「瀬戸」と「出雲」に分割されるシーンを見ようと多数の乗客が集まる

車窓は山あいから広大な湖へ

【夜行列車の旅】サンライズ出雲 日本海沿いを走り、“神話の里” 出雲へ 東京-出雲市(1)から続く

興奮しているのか、翌朝も5時過ぎには目が覚めた。窓側に体を向け、横になってうっすらと明け始めた空を眺める。鉄橋を渡り、しばらく走ると姫路駅に停車した。たしか姫路城は駅から徒歩15分。ひょっとして見えるだろうかと、寝ぼけ眼できょろきょろする。旅先の駅でこんなふうに朝を迎えるなんて、夜行列車ならではの新鮮な体験だ。

岡山駅で「瀬戸」と別れ、倉敷駅から伯備(はくび)線に入ると、高梁(たかはし)川沿いを蛇行しながら走る。車内に2両設けられたラウンジ車両を覗(のぞ)くと、窓に面したカウンターとイスが配置され、親子連れが朝食の弁当を広げていた。カウンターに肘をつき、線路に迫らんばかりの川の流れを見下ろす。

⑨ 250417-19_468.jpg
B寝台シングルの個室が通路の両側に並んでいる

⑩ 250417-19_523.jpg
6時過ぎ、雲間から朝日が

新見駅を過ぎて間もなく、分水嶺のアナウンスが入った。谷田(たんだ)峠のトンネルを抜けると水系が変わり、川の流れが逆になるとのこと。鳥取県に入ると、中国地方の最高峰・大山(だいせん)が姿を現す。これが伯耆(ほうき)富士か……、見事な姿に思わず唸(うな)る。幾重にも連なる山々の稜線も、個室でゆったり眺めるとひときわ美しい。

⑬ 250417-19_924.jpg
鳥取県に入ると山間に田んぼが広がりのどかな風景に。右手に大山が見えてくる

山陰線の米子(よなご)駅を出ると、打って変わって中海、宍道(しんじ)湖と雄大な水辺が車窓に出現。うっとり眺めていると、間もなく終点の出雲市駅だ。

⑯ 250417-19_1094.jpg

ドキドキと心高鳴ったり、しんみり旅情に浸ったり、これまで体験したことのない約12時間の列車旅だった。日本全国が高速でつながり、旅が容易になった今だからこそ、夜行寝台列車は、旅の特別感を演出するワンダーランドのような存在に映るのかもしれない。そんなことを思いながら、“神話の里”出雲の地に降り立った。

文/高崎真規子 写真/青谷 慶

⑮ 250417-19_1127.jpg
出雲大社を模した出雲市駅の駅舎。北口から出雲大社方面に向かうバスが出る。東側に電鉄出雲市駅がある

モデルコース.jpg

サンライズ出雲

運転日 毎日

運行区間 東京―出雲市(1日1往復)
※お盆、年末年始には臨時便あり

料金 運賃+特急料金+寝台料金(ノビノビ座席は寝台料金不要、指定席530円[通常期])
※東京―出雲市間の片道料金=「シングルデラックス」2万9490円、「シングル」2万3210円、「ソロ」2万2110円、「ノビノビ座席」1万6040円など

販売 駅の指定席券売機およびみどりの窓口、えきねっと、主な旅行会社など


※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2025年8月号)
(Web掲載:2025年9月2日)


Writer

高崎真規子 さん

昭和の東京生まれ。80年代後半からフリーライターに。2015年「旅行読売」の編集部に参加。ひとり旅が好きで、旅先では必ずその街の繁華街をそぞろ歩き、風通しのいい店を物色。地の肴で地の酒を飲むのが至福のとき。本誌連載では、大宅賞作家橋本克彦が歌の舞台を訪ねる「あの歌この街」、100万部を超える人気シリーズ『本所おけら長屋』の著者が東京の街を歩く「畠山健二の東京回顧録」を担当。著書に『少女たちはなぜHを急ぐのか』『少女たちの性はなぜ空虚になったか』など。

Related stories

関連記事

Related tours

この記事を見た人はこんなツアーを見ています