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【夜行列車の旅】コラム 夜行列車の過去・現在・未来(鉄道カメラマン・ライター 松尾 諭)

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【夜行列車の旅】コラム 夜行列車の過去・現在・未来(鉄道カメラマン・ライター 松尾 諭)

西日を浴びて東北線を走る「カシオペア」。2025年6月いっぱいで運行を終了

長距離移動といえば夜行列車だった

 「♪上野発の夜行列車 おりた時から……」と石川さゆりが歌ったのは1977年のこと。ヒット曲「津軽海峡・冬景色」の歌い出しに代表されるように、かつて長距離移動といえば夜行列車だった。青函(せいかん)連絡船が就航していた当時の上野駅は夜行列車が東北や北陸各地へ向けて発車し、さぞかし賑(にぎ)やかだったことだろう。

「走るホテル」とも呼ばれた青い20系客車が登場し、寝台客車列車=ブルートレイン(明確な定義はない)は一大ブームを巻き起こした。そんなブルートレインも、88年3月の青函トンネル開業時にデビューした「北斗星」が2015年3月に定期運行を終了。さらに25年6月末には、不定期ながらJR東日本エリアを中心に運行されていた「カシオペア」も寝台列車としての役目を終える。

ステンレス製車体の豪華2階建て客車の「カシオペア」は1999年7月に運転を開始し、2016年3月まで上野―札幌駅間を走り続けた。定期運行終了後も団体臨時列車として「カシオペアクルーズ」や「カシオペア紀行」が続いた。機関車が力強く牽引(けんいん)する12両編成の長大な客車列車だっただけに、引退が惜しまれる。

今や夜行列車は絶滅危惧種ともいえる貴重な存在だ。現在も定期運行されている夜行寝台列車は東京-高松駅間の「サンライズ瀬戸」と東京-出雲市駅間の「サンライズ出雲」のみ。不定期運行の夜行列車ではJR西日本エリアを走る「WEST EXPRESS(ウエストエクスプレス)銀河」、期間限定の臨時特急列車では「アルプス」、東武鉄道の「尾瀬夜行23:45」が挙げられる。秩父鉄道や大井川鐵道の蒸気機関車・電気機関車を使った夜行列車、近鉄でも「ミッドナイトひのとり」といった夜行列車が企画されている。

日本三大クルーズトレイン

夜行列車は目的地へ向かう手段としてだけでなく、列車の旅を楽しむ方向へ確実にシフトしている。「WEST EXPRESS 銀河」はそんなニーズをうまく捉えており、乗車券と指定席特急券だけで気軽に夜行列車に乗ることができる。

その一方で13年10月にJR九州の「ななつ星in九州」が運転を開始し、豪華寝台仕様のクルーズトレインが次々に登場した。クルーズトレインはもはや目的地へ向かうという列車の使命を持たない。1泊数十万円以上の豪華寝台列車に乗って、観光しながら周遊することが目的なのだ。17年5月にJR東日本の「トランスイート四季島(しきしま)」、同年6月にはJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風(みずかぜ)」も登場し、「ななつ星in九州」とともに日本三大クルーズトレインと呼ばれるほど定着した。

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阿蘇駅に停車中のJR九州の「ななつ星in九州」

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JR東日本が誇る豪華絢爛(けんらん)な「トランスイート四季島」

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日本海が車窓に広がるJR西日本の「トワイライトエクスプレス瑞風」

夜行列車自体は少なくなったものの、JR東日本は先日、新たな夜行特急列車を27年春に導入すると発表した。車体の色はブルートレインの青を引き継ぐものとなるようで、鉄道ファンの期待が高まっている。

文・写真/松尾 諭


(出典:「旅行読売」2025年8月号)
(Web掲載:2025年8月30日)


Writer

松尾 諭 さん

フォトグラファー・ライター。1977(昭和52)年奈良県生まれ、三重県育ち。旅行会社勤務を経て、2005(平成17)年に鉄道ジャーナル社の『旅と鉄道』編集部へ。2009(平成21)年からフリーのフォトグラファー・ライターとなる。旅行雑誌や鉄道趣味誌などで取材を行い、写真や記事を発表。全国各地へ鉄道風景や絶景を求めて撮影行脚を続けている。

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