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【春を味わう旅】かながわブランド“湘南しらす”を鎌倉・腰越港「しらすや」で味わう

場所
> 鎌倉市ほか
【春を味わう旅】かながわブランド“湘南しらす”を鎌倉・腰越港「しらすや」で味わう

「湘南しらす」をふんだんに使ったしらすづくし定食2100円。しらす漁の期間は小鉢の刺し身が生しらすに変わる

1艘曳網漁で味と鮮度にこだわる

日本三大深湾(しんわん)の一つに数えられる相模(さがみ)湾は、プランクトンが豊富な黒潮が表層を流れているため多種多様な魚介類が集まる。有名なのは主にカタクチイワシの稚魚であるしらす。

「湘南しらす」は、神奈川県しらす船曳網漁業連絡協議会(しらす協議会)に所属する漁業者が、しらす船曳(び)き網漁でとった生しらすとその加工品を指し、「かながわブランド」「かながわ名産100選」に認定されている。

「1艘曳(そうび)き」で行う漁の特徴は、網を曳く時間が10分〜15 分と短く、1度にとれる量も少ないため、網の中でしらすが傷まないという利点がある。また、水揚げしたしらすは、生食用はすぐに塩分濃度1.8%の氷水で絞め、釜揚げ用はより濃い塩水で茹(ゆ)で上げ、天日干しにする。

江ノ電沿線の腰越(こしごえ)漁協では許可を受けた4軒がしらす漁を操業。勘浜水産はその1軒で、親戚が営む「しらすや」は腰越漁港の目の前に店を構え、とれたてのしらすが味わえる。店主で料理長の柴田勝明さんは「氷水で締めた生しらすが漁港からすぐに運ばれて来ます」と言い、鮮度が自慢だ。釜揚げしらすは漁港の加工所で釜茹でして天日干ししたもので、こちらの鮮度も申し分ない。

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江の島を望む腰越漁港

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日本料理店で働いていた経験を活かして新たなメニューも考案する店主の柴田勝明さんと女将の柴田明日加さん

しらすの漁期は3月11日〜12月31日で、冬場を除いてとれるが、3月〜5月にとれる「春しらす」は、黒潮の流れに乗って相模湾に入ってくるため脂がのって甘味もあり、特においしいという。「夏しらす」は少し苦みが強くなるそうだ。

人気の「しらすづくし定食」は、釜揚げしらすに、自家製のちょっと甘めのちりめん佃煮、パリッと香ばしいタタミイワシ、春菊(夏はミツバ)と合わせたしらすかき揚げ、そして漁期なら生しらすが付く。

釜揚げしらすを豪快にかき込むと、しらす本来の味とともに、ほのかな塩味と磯の香りが口の中に広がった。釜揚げの際、塩以外は使わないので素材の味をより直接感じる。しょうゆを垂らして薬味と混ぜ合わせると、さらに箸が進んだ。

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道路を隔てて腰越漁港の目の前に立つ「しらすや」

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52席の店内はウッディーな雰囲気

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釜揚げしらす丼1100円。漁期には生しらす丼も

駐車場の一角には網元直営の勘浜水産しらす直売所がある。生や釜揚げのしらすをはじめ、ちりめん、あら干しなどを販売している。釜揚げしらすを買って、鎌倉を舞台に映画化された「海街diary(ダイアリー)」に登場した「しらすトースト」を作りたくなった。

文/田辺英彦 写真/青谷 慶

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勘浜水産では釜茹でしたしらすを漁師さんたちが漁港で天日干しにする

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勘浜水産しらす直売所では、しらす漁期は生や釜揚げのしらすのほか、しらす加工品などを販売

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漁港の入り口に立つ腰越漁協直売所では新鮮な魚のフライを販売。アジフライ、サバフライ各400円、アカモク天ぷら、マグロ唐揚げ各500円(※)。テイクアウトだが店内にテーブル席もある ■12時〜16時/水・金曜休/TEL:0467-32-4743
※魚の種類と値段は仕入れによって変わる場合もある


しらすや

営業:11時〜21時/木曜休
交通:東海道線藤沢駅から江ノ島電鉄15分(または横須賀線鎌倉駅から22分)、腰越駅下車徒歩2分/横浜新道戸塚終点から15キロ
住所:鎌倉市腰越2-10-13
TEL:0467-33-0363

勘浜水産しらす直売所

営業:9時〜16時/荒天時不定休、しらす禁漁期間休/TEL:0467-33-1779

※記載内容は掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2025年4月号)
(Web掲載:2025年9月2日)


Writer

田辺英彦 さん

東京都大田区出身、埼玉県在住。旅行ガイドブック編集・執筆、出版業界誌執筆などを経てフリーランスに。東北・八幡平の温泉群と、低山ハイク、壊れかけたもの・廃れたものが好き。

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