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【いま、会える昭和】伊東のハトヤホテルで昭和のスケールの大きさを実感<静岡>

場所
  • 国内
  • > 北陸・中部・信越
  • > 静岡県
> 伊東市
【いま、会える昭和】伊東のハトヤホテルで昭和のスケールの大きさを実感<静岡>

ロビーのある本館とシアター会場別館を結ぶ円形通路。1968(昭和43)年に造られた

昭和を代表する大型温泉ホテル「ハトヤホテル」

〝伊東にゆくならハトヤ♪
でんわはヨイフロ……〟

懐かしいCMソングで知られるハトヤホテルは1947(昭和22)年創業の、昭和を代表する大型温泉ホテルの一つだ。600人収容のレストランシアターなど、多くの娯楽施設を備え、1960年~70年代の高度経済成長期からバブル期にかけて団体客や家族客で賑(にぎ)わった。

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そのハトヤホテルが今、若者たちに人気の〝映(ば)えスポット〟として新たに注目を浴びていると聞き、さっそく出かけることにした。

「意識的に何かを演出しているわけではないんですが、今は味わえない昭和の雰囲気を感じられるということなんでしょうね」

ハトヤグループ社長の原口茂さんはこう話す。1番の人気スポットは、ロビーのある本館とシアター会場別館を結ぶ筒形の円形通路。両脇の窓から陽が差し込み、不思議な雰囲気を醸している。撮影待ちの列ができる日もあるとのことで、YouTube(ユーチューブ)で見たという台湾からのツアー客も、うれしそうにスマートフォンを向けていた。

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本館入り口。増改築を重ね、現在は5棟の建物がある。自前の消防車も

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本館にある広大なロビー。高い天井にはシャンデリアが輝く

通路を渡った先にあるレトロな案内板も目を引く。最近は見かけなくなった昔ながらの凹凸のあるアクリルの切り文字は、昭和ならではの存在感があって新鮮に映る。

ハトをあしらった浴衣やお菓子、小物類もかわいいと評判だ。大浴場のサウナには親子3羽のハトの置物が飾られ、夕食のテーブルにはハトの絵柄のしょうゆさしが置かれていた。もう残り少ないそうだが、切り絵のようにハトヤの文字が彫られた鍋の五徳のデザインは、何とも愛らしい。

「創業者が当時としては珍しい1人用の鍋をお出ししようと考えたんですが、五徳などの既製品がなく、オリジナルで注文するしかなかった。そのときにハトヤと入れてもらったそうです」(原口さん)

今聞くと、ぜいたくなもてなしだなと思う。広大なシアター会場といい、大きな湯船が並ぶ体育館ほどの大浴場といい、とにかくスケールが大きい。浴衣で入れるバーは広く、シャンデリアが輝く小さなステージまである。

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かつてレストランシアターだった850平方メートルのシアター会場。現在、ショーは開催していないが、食事会場として使用

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円形通路の端、シアター会場別館の入り口にあるレトロな案内板

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今もわずかに残るオリジナルの五徳

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シャンデリアがきらめく長いエスカレーターも“映えスポット”の一つ

「働き方改革」などという言葉がなかった昭和の頃、土曜は半休の会社が大半だった。娯楽に使える時間は貴重だったろう。旅行はきっと今より特別な行事だった。ホテルではそんな宿泊客を楽しませようと、贅(ぜい)を凝らした。そんな時代の余裕や遊び心の名残を垣間見たようで、なんだかゆったりした気分になった。

ハトヤグループには、1975(昭和50)年オープンの姉妹館、ホテルサンハトヤもある。昭和のリゾートホテルの先駆けといわれ、眼下に海を眺められる客室、海風を感じながら入れる露天風呂など、徹底的に海のリゾートを満喫できる。両館の間には無料巡回バスも運行している。ディナーショー付きのプランもあるので、今度はこちらに泊まるのもいいだろう。

文/高崎真規子 写真/三川ゆき江ほか

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伊東駅から無料送迎バスを運行

ハトヤホテル

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スタンダードタイプの客室。海側指定は+1000円

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客室に置かれたハトヤサブレは売店でも販売

相模湾を見下ろす高台に立ち、客室数は162室。自家源泉を5本持ち、かけ流しの湯が楽しめる。バーやスナック、室内プール、ゲームセンターなど、館内施設も充実している。
■1泊2食1万4450円~/伊東線伊東駅から無料送迎バス5分/伊東市岡1391/TEL:0557-37-4126

ホテル サンハトヤ

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海に浮かぶように立つホテルサンハトヤ

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昭和レトロな趣のロビーにあるらせん階段

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レストランシアターで音と光のレーザーショーを見ながら夕食をとるプランも。期間限定で歌謡ショーなどもある

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壁の水槽を泳ぐ魚を見ながら入浴できる海底温泉「お魚風呂」

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太平洋を望む露天風呂。朝日を眺めながらの湯あみもいい

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売店で販売するハトヤオリジナルグッズ

海に面したロケーションが魅力で、客室は全室オーシャンビュー。「お魚風呂」と露天風呂のほか、打たせ湯やウォータースライダーを備えた水着エリア「海の冒険」もある。
■1泊2食1万9950円~/伊東線伊東駅から無料送迎バス5分/伊東市湯川堅岩572-12/TEL:0557-36-4126


※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2025年5月号)
(Web掲載:2025年10月5日)


Writer

高崎真規子 さん

昭和の東京生まれ。80年代後半からフリーライターに。2015年「旅行読売」の編集部に参加。ひとり旅が好きで、旅先では必ずその街の繁華街をそぞろ歩き、風通しのいい店を物色。地の肴で地の酒を飲むのが至福のとき。本誌連載では、大宅賞作家橋本克彦が歌の舞台を訪ねる「あの歌この街」、100万部を超える人気シリーズ『本所おけら長屋』の著者が東京の街を歩く「畠山健二の東京回顧録」を担当。著書に『少女たちはなぜHを急ぐのか』『少女たちの性はなぜ空虚になったか』など。

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