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【ひとり、秘湯へ】自然湧出のラジウム温泉 温冷交代浴でゆったり 大湯元 津金楼

場所
> 北杜市
【ひとり、秘湯へ】自然湧出のラジウム温泉 温冷交代浴でゆったり 大湯元 津金楼

左が源泉湯、右が加温湯。どちらの浴槽も毎日換水するため、21時~翌7時は入浴できない

体の免疫力や自然治癒力を向上させるというラジウム温泉

温泉に含まれるラドンなどの微量な放射性ガスを体内に取り込むことで、体の免疫力や自然治癒力を向上させるというラジウム温泉。全国の名だたるラジウム温泉を訪ねたが、山梨県北杜市の増富温泉は不思議と縁がなかった。戦国武将・武田信玄が負傷兵を治療させた〝信玄の隠し湯〟とも言われ、酷暑に疲れた体にはこのうえない名湯に思える。今回の秘湯旅は増富温泉に決めた。

増富温泉は長野県境に近い標高約1000メートルの山間にあり、中央線韮崎駅からはバスで1時間ほどかかる。5軒の温泉宿は本谷川(ほんたにがわ)沿いに並び、今宵の宿「大湯元 津金楼(つがねろう)」は最奥にあった。1875年に須玉町津金地区で創業。増富温泉には1914年に移転した。

「昔からの湯治宿ですから、お客様の目当ては温泉です。当館はラドンを豊富に含み、地表近くまで自噴する2本の源泉があり、新鮮で良質な温泉につかれるよう配慮しています」と5代目当主の津金胤司(たねじ)さん。

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施設は本館と旧館からなる。ロビーでフリーWi-Fiが利用できる

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5代目の津金胤司さんと女将の七生子(なおこ)さん。真心を込めた接客も宿の魅力だ

例えば、浴室の場所だ。館内には男女別の大浴場と「丹生(にゅう)の湯」(貸切風呂)の2か所あるが、どちらも放射性ガスが空気に触れて抜けないよう、源泉の近くに設けている。「丹生の湯」は源泉の真上に浴槽があるという徹底ぶりだ。

源泉の泉温は湧出時で26度ほど。大浴場では温冷交代浴ができるように、そのままかけ流しにする源泉湯と源泉を温めた加温湯がある。加温方法も温泉の質を守るため、直火ではなく浴槽内に蒸気管を通し、蒸気の熱で温めている。源泉湯は黄金色、加温湯は薄い黒色。湯の色が異なるのは加温の影響で、どちらも源泉を使用している証拠といえる。

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常連に人気の「丹生の湯」。近く温水シャワーを整備する予定

チェックイン後、さっそく「丹生の湯」へ。こちらは源泉湯のみで、体を沈める際にヒヤッとしたが、次第に体の芯まで温かくなる。源泉の注ぎ口を眺めながら、ぼんやりしていると30分近くも経(た)っていた。

部屋に戻ると、ほどなく夕食が運ばれてきた。「毎日、献立を替えるので、これといった名物料理はないですよ」と津金さんは謙遜するが、野菜たっぷりの手作り料理はほどよいボリュームで、盛り付けも美しく、大満足であった。

大浴場でもうひと風呂浴び、布団に寝転がると瞬く間に爆睡。翌朝は目覚めがよく、体も軽く感じた。今年の残りも頑張れそうである。

文・写真/内田 晃

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客室はすべて和室。本谷川のせせらぎが聞こえる

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夕食の一例。献立は日替わりなので連泊でも飽きない

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朝食はシンプルながら甘み、酸味などの五味を楽しませる

周辺のおすすめ観光

みずがき湖ビジターセンター

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紅葉の名所でもあるみずがき湖(塩川ダム湖)の南岸に立ち、観光案内や地場産品の販売を行う。屋上には大型天体望遠鏡を備え、2人以上の予約制で星空教室(1人2000円)も開催。レストランでは天日干しした地元産コシヒカリのご飯に、軽く焼いた厚切りベーコンをのせ、スパイシーなカレーを添えたベーコンカレー1300円が一番人気だ。
■10時~17時(12月~4月は~16時。レストランは11時30分~15時)/火曜休(12月~4月は火・水・金曜休)/中央線韮崎駅からバス50分、塩川下車徒歩5分/TEL:0551-45-0081

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大湯元 津金楼
TEL:0551-45-0711
住所:北杜市須玉町小尾6699

ひとり泊データ
条件:繁忙期を除く
客室:トイレあり8~10畳和室(全12室)
食事:夕・朝食=部屋食

料金(税込)
素泊まり:平日7300円/休前日7300円
1泊朝食:1平日1万600円/休前日1万600円
1泊2食:平日1万2800円/休前日1万2800円
※2人1室利用の場合は1泊2食1万1700円

泉質:ナトリウム―塩化物泉
日帰り入浴:不可
交通: 中央線韮崎駅からバス1時間、増富温泉郷下車徒歩5分/中央道須玉ICから20キロ

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本谷川の日受渕。宿から徒歩10分ほど

※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:旅行読売2025年11月号)
(Web掲載:2025年10月22日)


Writer

内田晃 さん

東京都足立区出身。自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。四国八十八ヵ所などの巡礼道、街道、路地など、歩き取材を得意とする。著書に『40代からの街道歩き《日光街道編》』『40代からの街道歩き《鎌倉街道編》』(ともに創英社/三省堂書店)がある。日本旅行記者クラブ会員

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