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【食べ歩き ご当地おでん】日本海の幸と伝統食材にだしが溶け込む 金沢おでん

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  • 国内
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  • > 石川県
> 金沢市
【食べ歩き ご当地おでん】日本海の幸と伝統食材にだしが溶け込む 金沢おでん

菊一の女将・宮崎美恵子さん(手前)と娘の智子さん。毎日10時頃から仕込みを始める

市民1人あたりに対するおでん店の数が全国一と言われる金沢市

金沢市は市民1人あたりに対するおでん店の数が全国一と言われる。今回は、名店がひしめき合う金沢市役所周辺の香林坊(こうりんぼう)・片町エリアの3店を訪ねた。

金沢おでんの特徴に、だしがある。昆布やカツオ節、煮干しなどをベースに、大野醤油(しょうゆ)など地元産の醤油を使う。色や味は薄めで、さまざまな具材の旨(うま)みがしみ出している。ほんのり甘くコクがあり、「飲み干せるだし」と言われる。国道157号を入った路地に立つおでん居酒屋「三幸(みゆき)本店」も、だしにこだわる。おでん鍋のだしを薄めずに使う玉子スープは、汁物として最後までごくごく飲めた。

具材の代表格は冬の味覚「カニ面」だ。ズワイガニのメスである香箱(こうばこ)ガニの甲羅に、カニ身と、外子と言われる卵、未成熟卵の内子が詰めてある。「すべて手作業で、つなぎは何も入れないの」と、カニ面発祥店である「おでん菊一」の女将(おかみ)、宮崎美恵子さんが教えてくれた。だしがしみ込んだぜいたくな逸品を1杯まるまる食べられるとあって、市民はもちろん、観光客にも大人気。食べ終わった甲羅に熱燗(あつかん)を注いで味わうのも、お楽しみの一つだ。

カニ面以外にも、バイ貝や、ドーナツ状の車麩(くるまふ)、金沢弁で「ひろず」と呼ばれるがんもどきなど、地元食材のおでん種も豊富。秋から冬が旬の源助だいこんや金沢春菊など加賀野菜のおでん種もある。珍しいところでは、赤いパプリカで色付けした練り物でウズラの卵を包んだ「赤玉本店」の赤玉も人気の具材だ。

文/出口由紀 写真/宮川 透ほか

🍢おでん菊一

カニ面めん発祥の店

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おでん菊一外観

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手間暇かけて作られる菊一のカニ面

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赤巻、金時草(きんじそう)入りのふかし(練り物)、生麩(なまふ)など、金沢らしい菊一のおでん種

金沢一の老舗おでん屋。昆布とカツオ節、大野醤油を使っただしは、1934年の創業当時から継ぎ足し続け、深い味わいだ。カニ面の提供は11月8日前後から12月末まで。
■17時30分~22時(おでんがなくなり次第終了)/火・水曜休の他、不定休あり/バイ貝495円、金沢がんも495円など/金沢市片町2-1-23/北陸新幹線金沢駅からバス12分、香林坊下車徒歩2分/TEL:076-221-4676(予約不可)

🍢おでん居酒屋 三幸 本店

おでんも総菜も同時に楽しめる

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店を切り盛りする掛上さん夫妻

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三幸本店には、カウンターのほか、テーブル席や小上がりもある

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車麩やバイ貝など8種を盛り合わせた「金沢おでん盛り合わせ」

1967年に先代女将が開店、2代目の掛上(かけがみ)努・いづみさん夫妻が味を継承する人気店。だしには鶏ガラも使用。自家製さつま揚げ「みゆき揚げ」などの一品料理も充実している。
■16時~21時30分(おでんがなくなり次第終了)/日曜・祝日、第2月曜休/車麩330円、バイ貝550円~など/金沢市片町1-10-3/北陸新幹線金沢駅からバス15分、片町下車徒歩3分/TEL:076-222-6117

🍢赤玉本店

約40種のおでん種がそろう

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赤玉本店のおでん種は約40種。オンラインショップでも販売

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赤玉本店のおでん一人盛り

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店名にもなっている名物「赤玉」

片町交差点に面し、席数も多い店。1927年創業の洋食店が、戦後まもなくおでんを出したのが始まり。受け継がれてきたおでんだしを使った牛すじ煮込み660円も人気。
■16時〜21時30分(土曜は15時~、日曜・祝日は15時~20時30分)/月曜(祝日の場合は翌日)休/赤玉390円、肉いなり330円など/金沢市片町2-21-2/北陸新幹線金沢駅からバス15分、片町下車徒歩2分/TEL:076-223-3330


※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2025年11月号)
(Web掲載:2025年10月21日)


Writer

出口由紀 さん

美味しいものには目がないライター。その土地の空気の中で味わう新鮮な特産品や郷土料理は、旅ならではの醍醐味だと思っている。最近感動したのは、生でかじった北海道の白いトウモロコシと夏の日本海の岩ガキ。土地それぞれの言葉を聞くのも好きで、一期一会の出会いと会話を楽しみながら旅をする。

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