【北海道の手しごと】見て、触れて知る、旭川家具の温もりと機能美(1)
旭川デザインセンター。一般的な「家具」という言葉とは趣を異にする建物
家具の「五大産地」に数えられる旭川で、その歴史と技を知る
普段さりげなく使っている家具。そうひんぱんに買い替えるものではないが、引っ越しの際にそのいくつかを入れ替えたり、長年使っていたものにガタが来て新しく購入したり、時々家具選びの機会がやってくる。そんな時、家具の産地を考えて買うことはあるだろうか? おそらくはデザインや機能性、予算が優先され、産地を考慮することはあまりないだろう。日本の家具に「五大産地」があることを知る人も少なかろう。
ちなみに「五大産地」とは旭川(北海道)、静岡(静岡)、飛騨高山(岐阜)、府中(広島)、大川(福岡)の5か所。それぞれに独自の歴史と技術を持つ産地だ。その中の一つ、旭川の家具を知る機会に恵まれた。北の大地で脈々と受け継がれてきた技と家具づくりにかける情熱に触れることができた。家具を見る目が変わったと言っても過言ではない。そんな体験をお伝えしたい。今後の家具選びの一助となれば幸いだ。

50年前から現在まで、イスのデザインの変遷がよく分かるミュージアム
海外のデザイナーも加わりデザインを洗練。付加価値を高める
旭川家具との出会いは、旭川駅から北東へバスで24分、国道39号沿いにある「旭川デザインセンタ―」から始まった。ここは約1000坪の敷地に、約30の家具メーカーが常設ブースを設け、約1200点もの家具やクラフト製品を展示・販売する施設。2023年にリニューアルした建物は近代的で、ミュージアムやギャラリー、体験工房も併設している。
旭川家具の歴史をひも解くと、明治の中頃に木挽場が完成し、鉄道も開通して札幌から第七師団の移駐が始まり、街づくりのために全国から木工職人が移住してきたことにさかのぼる。旭川近郊には大雪山系の原生林が広がり、良質な木材を豊富に入手できたことから大いに発展した。
昭和になり生産量は減少したが、戦後、札幌などで進駐軍の宿舎や娯楽施設の建設が始まると、ふたたび生産量は増え、1949年に国の「重要木工地区」に北海道で唯一指定された。だが、ほかの伝統産業と同様に生活様式の変化に伴って需要は減少。このまま伝統を途絶えさせてはいけないと案を練り、旭川家具の技術力と日本はもとより海外のデザイナーの力を融合させて付加価値を高めるため、1990年から「国際家具デザインフェア旭川」(IFDA)を開催。以来、3年に1度開催し、旭川家具の新しいイメージ作りに取り組んでいる。
ちょっと堅苦しい説明になったが、「旭川デザインセンター」では、そんな経緯も詳しく解説している。しかし百聞は一見に如かず。館内2階のミュージアムに足を踏み入れると、IFDAの受賞作品や歴代の旭川家具がずらりと並び、従来の家具のイメージが一新された。壁一面には約50ものイスが、50年前のものから著名なデザイナーによる最新のものまで、時系列を追って展示されていた。時が進むにつれてデザインが洗練されていく様子に見入ってしまう。しかし座ってみれば実感できるであろう木の質感や木目の美しさは変わらない。旭川家具が素材を生かしながらもデザインにこだわる証が一目瞭然だ。
そんなイスを眺めながら、この施設の名称が「旭川デザインセンター」であることが腑に落ちた。「家具センター」としては元も子もない。あくまで家具をベースにした“デザイン”センターなのである。

自然との一体感にひたれるような斬新なデザインのイス。素材はシラカバを用いている


比較的手ごろな値段の小物類も種類、デザインが豊富だ
小物から家具まで。随所にそのデザイン性、機能美が光る
各メーカーのブースを見て回った。テーブル、イス、戸棚、本棚などそれぞれのメーカーが独自のデザインの製品を展示していた。食器、小物入れ、ペンケースなどの小物もバラエティーに富んでいた。ここでも共通するのは素材の美しさ、木目の美しさ。大型家具はほとんどが受注生産で一桁違うほど値が張るが、一生ものとしていつかは手に入れたい。使い込むほどに艶が増すことだろう。木々の年輪や節目を見つめていると、北海道の厳しくも美しい自然がまぶたに浮かんでくるようでいとおしい。やはり、家具を知るには家具に触れることが一番である。
続いては、「使い捨てない、長く愛す」をテーマにオリジナル家具やオーダーメイド家具を製作している小さなメーカー「アイスプロジェクト」代表の小助川泰介さんの活動を紹介する。
文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝
【北海道の手しごと】見て、触れて知る、旭川家具の温もりと機能美(2)へ続く
営業:10時~17時/祝日を除く火曜休、年末年始休
料金:入館無料
交通:旭川駅からバス24分、永山2条10丁目下車すぐ。旭川駅から車で15分、旭川空港から車で35分
住所:北海道旭川市永山2条10-1-35
TEL:0166-48-4135
(Web掲載:2026年1月13日)


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