【一度は見たい紅葉百景】大いなる大雪山系が「日本一早い紅葉」に染まる 層雲峡(1)

広葉樹林、針葉樹林、露出した岩肌、そして青空。色彩あふれる秋の景色が、涼やかな風とともに思い出に残る(写真/ピクスタ)
9月上旬、ここから「日本一早い紅葉」の便りが届く
北海道の中央部、旭川市から東へ70キロの上川(かみかわ)町に位置する層雲峡は、石狩川を挟んで断崖絶壁が続く景勝地だ。平地は少ないが空は広い。その抜けるような青空の下に、最高峰の旭岳をはじめ北鎮(ほくちん)岳、黒岳、比布(ぴっぷ)岳、赤岳など標高2000メートル級の山々からなる大雪山系が続いている。
そして9月上旬、ここから「日本一早い紅葉」の便りが届く。猛暑に見舞われた今年は、その便りがいつにも増して待ち遠しい。錦絵のように華やかな光景は、麓の層雲峡温泉街から見上げるだけでも雄大だ。遠くの山々からホテルが林立する温泉街まで、赤や黄色の紅葉が波のごとく押し寄せてくる。
層雲峡の名付け親は、大正期にこの地を訪れた文人の大町桂月(おおまちけいげつ<※>)。大雪山系を縦走し、紀行文『層雲峡より大雪山へ』に「富士山に登って、山岳の高さを語れ。大雪山に登って、山岳の大(おおい)さを語れ」と記した。それから100年後の現代、黒岳の山麓にはロープウェイが架かり、桂月の時代よりはるかに容易に、手軽にその「大さ」を知ることができる。
「大雪山 層雲峡・黒岳ロープウェイ」は、標高670メートルの層雲峡温泉街から一気に標高1300メートルの黒岳5合目へ向かう。たった7分、ロープウェイに揺られるだけで、景色も空気も一変する。見下ろす山肌には、ダケカンバやミズナラの黄色をベースにナナカマドやカエデの赤がアクセントを加え、エゾマツの緑も際立つ。
<※>アイヌ語で「滝のある川」という意味の「ソウウンペッ」と呼ばれていたことから、大町桂月が字を当てたものとされる。
8月上旬、大雪山系に生育するチングルマが綿毛を付けていた
黒岳5合目ではチシマヒョウタンボクの実がなっていた
エゾシカもよく見かけるが、決して刺激を与えないように
大雪山 層雲峡・黒岳ロープウェイ
🍁9月上旬〜10月上旬
標高1984メートルの黒岳の山腹に、1967年に設けられた日本最北端のロープウェイ。所要7分で着く黒岳5合目には展望台と、大雪山系を解説する資料館がある。ペアリフトを乗り継いで行く黒岳7合目の登山口から黒岳山頂までは、所要1時間30分。5合目に登山用品のレンタルもある。
【Data】6時~18時(10月1日~15日は7時~17時)/荒天時休/往復3000円(リフトセット券は往復3900円)/函館線旭川駅からバス2時間、層雲峡バスターミナル下車徒歩10分/TEL:01658-5-3031
銀泉台
🍁9月中旬
赤岳(標高2078メートル)の登山口にあたり、標高は1490メートル。山頂へ続く山肌が燃えるような赤や鮮やかな黄色に染まる。途中の原生林も紅葉のトンネルとなり圧巻。バスは早朝と夕方、往復2便のみ(運行は9月まで)。車の場合、国道から分岐する道は砂利道が15キロほど続き道幅も狭いので注意。
【Data】見学自由/層雲峡バスターミナルからバス1時間、銀泉台下車すぐ/TEL:01658-2-1811(層雲峡観光協会)
銀河・流星の滝
🍁10月上旬〜中旬
層雲峡に流れ落ちる大小さまざまな滝の中でも規模と景観は代表格。高さ120メートルの銀河の滝と、同90メートルの流星の滝が、垂直に切り立った断崖絶壁を流れる。歩いて20分ほど上った双瀑台からは、日本の滝百選にも選ばれた二つの滝を同時に視界に収められる。
【Data】見学自由/層雲峡バスターミナルから徒歩30分/TEL:01658-2-1811(層雲峡観光協会)
【一度は見たい紅葉百景】大いなる大雪山系が「日本一早い紅葉」に染まる 層雲峡(2)へ続く(9/22公開)
文/渡辺貴由 写真/齋藤雄輝ほか
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:旅行読売2025年10月号)
(Web掲載:2025年9月21日)