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【私の初めてのひとり旅】本田聖嗣さん ミュンヘン、パリ(1)

場所
> ミュンヘン、パリ
【私の初めてのひとり旅】本田聖嗣さん ミュンヘン、パリ(1)

ほんだ・せいじ[ピアニスト]
1970年、東京生まれ。東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻卒業、パリ国立高等音楽院ピアノ科・室内楽科卒業。仏、伊のコンクールで最高位入賞後、日仏で演奏活動を開始。現在、日本大学芸術学部音楽科講師のほか、NHK Eテレ「3か月でマスターするピアノ」の講師やNHK-FM「リサイタル・ノヴァ」、「オペラ紅白歌合戦」の司会などを務める。テレビのドラマ音楽の作曲・演奏も担当している。

ひとり旅の原点はミュンヘン。話し好きだからこそ旅は楽しめる

子どもの頃から歴史好き、旅好きでした。国内各地のみならず、世界各国へ赴き演奏活動などをしていますが、その行き帰りや現地でもよくひとり旅をしています。初めてのひとり旅は、1991年12月下旬に行ったミュンヘンへの約1週間の旅でした。それは初めての海外旅行でもありました。

東京藝大2年生の時、海外の先生の指導を受けたいと考えるようになりました。先輩(直接の知り合いではなく同級生の姉)がミュンヘン国立音楽大学で学長であるクラウス・シルデ氏に師事しているというので、紹介してもらい、単身、ミュンヘンへ向かうことにしたのです。当時は直行便がなかったので、親戚がいたロンドンに寄ってから行きました。

ミュンヘンのリーム空港に着いた時は吹雪でした。出迎えてくれた先輩と鉄道でミュンヘン中央駅へ向かいました。駅近くの安ホテルを予約してもらっていたのですが、ドイツの駅周辺はヤバい所が多く、ホテルの隣はSMクラブでした(笑)。

先輩の紹介といっても、「日本からこういう学生が来るので会ってください」という程度の口利きです。すぐにはシルデ先生に会えず、朝6時から学長室の前で待っていました。先生が来たので、英語で「紹介を受けて日本から来ました。レッスンしてください」と直談判しました。ヨーロッパでは、直接行った方が熱意が伝わって認められるんですね。先生は「8時から生徒のレッスンがあるので、その前に見てあげよう」と言ってくれました。

約1週間の滞在で2回ほどでしたが、シルデ先生に指導してもらえました。先生は演奏活動で何度も来日し、後に藝大の客員教授もされるのですが、少し日本語も話せて、レッスンでは「セイジサン、ソコハ〝ヒ〟デス!」と言われたのを今でも思い出します。火のように烈はげしく弾きなさいという意味です。

話/本田聖嗣 聞き手/田辺英彦

【私の初めてのひとり旅】本田聖嗣さん ミュンヘン、パリ(2)へ続く(11/8公開)

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ミュンヘン大聖堂の前のマリエン広場では、伝統的なクリスマス・マーケットが開かれる(写真/ピクスタ)


(出典:「旅行読売」2025年11月号)
(Web掲載:2025年11月7日)


Writer

田辺英彦 さん

東京都大田区出身、埼玉県在住。旅行ガイドブック編集・執筆、出版業界誌執筆などを経てフリーランスに。東北・八幡平の温泉群と、低山ハイク、壊れかけたもの・廃れたものが好き。

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