【私の初めてのひとり旅】パンツェッタ・ジローラモさん ロンドン(1)

パンツェッタ・ジローラモ[モデル・タレント]
1962年、イタリア生まれ。ナポリ建築大学在学中に亡き父の後を継ぎ、歴史的建造物の修復に携わる。88年から日本に在住。多数の雑誌やテレビ番組などで祖国イタリアについて紹介し、タレント活動を始める。2006年、本国より騎士の称号「カバリエレ~イタリア連帯の星勲章」を授与される。14年3月、「連続して最も多くファッション誌の表紙を飾った数(男性モデル)」としてギネス世界記録に認定され、現在も更新中。
刺激に満ちた70年代末のロンドン、行く当てもなく彷徨した16歳の夏
初めてのひとり旅は16歳の時、1978年でした。高校の夏休み前半、6月から7月にかけての約1か月、イギリスのロンドンに滞在しました。ロンドンにいた親戚が、僕たちが住んでいたイタリアのナポリに来るというので、その前に僕がひとりでロンドンへ行き、一緒に戻って来ることにしました。
16歳で海外へひとりで行ったことのある人は、その頃僕の周りにはあまりいなかったと思います。父からは「行ってみたら」と言われました。経験を積ませようと思ったのでしょう。チケットなど旅の手配はすべて父がやってくれました。
ナポリからパリまでは夜行列車で行きました。6人乗りの部屋でしたが、乗車の際、父がほかの乗客に「イギリスに行くの?だったら一緒に乗り換えてもらってもいいですか」と頼んでくれました。イタリア人は陽気でフランク。若者も年配の人もいたけど、話をすればするほど親しくなりました。
ナポリから北上し、ローマ、ボローニャ、フィレンツェ、ミラノを経て、スイスに入りました。国境を越えるときには出入国審査もありましたが、大人と一緒でなくても何とか大丈夫でした。パリで列車を乗り換えると、フランス人が乗ってくる。話をするときはボディーランゲージ。それでなんとなく通じ合って、結構みんな優しかったですね。
フランス北部のカレーでドーバー海峡を渡るのですが、海峡トンネルはまだありません。当時は鉄道連絡船が運航していて、フェリーに客車を載せて海峡を渡るんです。列車に乗ったまま、翌日の昼過ぎにロンドンに着きました。ナポリを出発してから24時間くらいかかりました。
話/パンツェッタ・ジローラモ 聞き手/田辺英彦
【私の初めてのひとり旅】パンツェッタ・ジローラモさん ロンドン(2)へ続く(8/5公開)
イタリアで歴史的建造物の修復作業をしていた1987年頃
(出典:「旅行読売」2025年7月号)
(Web掲載:2025年8月4日)