秋の特別拝観で希少な寺宝を観賞する

絢爛たる襖絵で区分けられた聖護院門跡の宸殿内部
少しずつ秋の気配が近づいてくると始まる「秋の特別拝観」
少しずつ秋の気配が近づいてくると、京都のさまざまな寺院で「秋の特別拝観」が始まる。今回は希少な寺宝が観賞できる三つの寺院を紹介しよう。
左京区の聖護院(しょうごいん)門跡は、皇族や摂家が住職を務めた由緒ある寺院。今年は10月11日から12月7日の金・土・日曜と祝日、10月21〜23日限定で、通常非公開の宸殿(しんでん)を公開する。見どころは宸殿内の狩野派による約120面におよぶ金碧(きんぺき)障壁画だ。金箔を押した襖には、故事に由来したものや、雄大な自然が豪快に描かれ、絢爛とした雰囲気を漂わせる。また仏間には役行者像を中心に、複数の仏像が祀られている。もっとも多いのは不動明王像で、鎌倉から江戸にかけて、さまざまな時代の作品を見比べることができる。また宸殿の公開に合わせ、1676年に御所から移築された書院も公開する。
天明の大火の後、仮皇居の役割を果たした聖護院門跡
平安中期の僧、恵心僧都源信(えしんそうずげんしん)が開創したと伝わる宇治市の藏林寺は、毎年10月の数日のみ特別公開される(2025年は10月22・23日、13時〜15時)。本堂には4体の仏像(市の文化財)を安置する。中央に鎮座するのは、恵心僧都が自身の病気平癒と厄除けを祈って彫ったと伝わる、本尊の阿弥陀如来坐像。細くしなやかで、穏やかな表情が特徴だ。向かって右には薬師如来坐像、左には毘沙門天立像と地蔵菩薩立像を安置。いずれも寄木造(よせぎづくり)で、平安時代後期または末期作と伝わる。
恵心僧都源信によって彫られたという藏林寺の阿弥陀如来坐像
北区にある大徳寺の塔頭、総見院は豊臣秀吉が織田信長の一周忌追善法要のため建立した菩提寺。「本能寺の変」の後、信長の遺体が見つからなかったことから、秀吉は荼毘に付すためのものと、菩提寺に奉納するための2体の木像を作らせたという。そのうちの1体「木造織田信長公坐像」が総見院に安置されている。最晩年の面影をよく表していることから、その出来ばえに秀吉も大満足したという言い伝えも。通常は非公開だが、10月11日から11月30日まで特別公開される。境内墓地には信長をはじめ、正室や側室の供養塔や墓碑が9基並ぶ。
京都浪漫悠久の物語「仏師と巡る秋の特別拝観~聖護院・藏林寺・総見院~」
2025年10月13日(月・祝) よる8時~8時53分 BS11にて放送
京都画報「京都迎賓館開館20周年(仮題)」 出演:常盤貴子 2025年10月22日(水)よる8時~8時53分
※内容は変更の場合あり
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(出典:「旅行読売」2025年11月号)
(Web掲載:2025年10月6日)