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【手わざの日本旅】第4回 界 出雲 石見神楽の守り人と学ぶ、神楽面の絵付け体験(1)<島根・出雲ひのみさき温泉>

場所
> 出雲市
【手わざの日本旅】第4回 界 出雲 石見神楽の守り人と学ぶ、神楽面の絵付け体験(1)<島根・出雲ひのみさき温泉>

大国主命(大黒様)と恵比寿から面を選び、柿田さんに教わりながら絵付け。私は商売繁盛と縁結びの神・大国主命を選んだ。下は完成した神楽面

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神楽面から、出雲の旅が始まる

島根半島の西端、日本海に突き出す日御碕(ひのみさき)。出雲大社からさらに西へ車で約20分、海岸線を走った先に「界 出雲」はある。

目の前に広がるのは日本海。白亜の日御碕灯台が立ち、夕日の名所として知られる場所だ。近くの日御碕神社には、天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀(まつ)る「日沈宮(ひしずみのみや)」が鎮座する。

今回の滞在は、「手業(てわざ)のひととき」に参加するためにいつもより少し早く始まった。これは地域の職人・作家・生産者とともに行う界オリジナルのご当地文化体験で、界 出雲では「神楽(かぐら)面の絵付け体験」を実施している。アーリーチェックインをして体験会場へ向かうと、「柿田勝郎(かきたかつろう)面工房」二代目、柿田兼志(けんじ)さんが待っていてくださった。

石州和紙が、神楽の舞を変えた

テーブルの上には、絵付けの途中まで仕上げられた神楽面が並ぶ。手に取って、驚いた。とても軽いのだ。

「お面は木彫りを想像する方が多いのですが、これは和紙です」と、柿田さんの解説から体験は始まる。

使われているのは、島根県西部で作られる「石州(せきしゅう)和紙」。神楽面用には、長い繊維などをあえて残した和紙を使う。それを幾重にも重ねることで、繊維が絡み合い、丈夫な面になるという。

粘土で作った原型に和紙を重ねて貼り、乾いたら中の粘土を叩いて取り出す。「脱活(だっかつ)」と呼ばれる技法で、複雑な形も作ることができ、面は軽く、息もしやすいそうだ。

石見(いわみ)神楽の面は、かつて木で作られていたが、明治時代に和紙の面が広まった。軽くなったことで、舞もより激しく、ダイナミックになっていったと柿田さんは話す。

さらに石州和紙は、神楽衣装の生き物刺繍(ししゅう)の下地にも使われている。

「石州和紙がなければ、石見神楽は成り立たない。面にも、衣装にも。それくらい密接な関係なんです」

表からは見えないところでも、土地の素材が神楽を支えている。

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「ご当地楽広場」。しめ縄や石州瓦のベンチが配され、ご当地楽「石見神楽」で使われる神楽面(下)や華やかな衣装も展示されている

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木戸渚奈子(ななこ)さんの神楽面。「笑う門には福来たる」の言葉通りの笑顔

一本の線から面の表情が生まれる

体験では、柿田さんが途中まで彩色した大国主命(おおくにぬしのみこと)と恵比寿の面から好きな方を選び、絵付けをする。

顔料には、日本画で使われてきた岩絵具などが使われている。唇を描き、歯を入れ、鼻や頬に陰影をつける。目や眉や髭(ひげ)も筆で描いていく。

ところが、平面に絵を描くのとは勝手が違う。鼻も頬も飛び出した立体物で、しかも細かい部分だ。

唇が少しはみ出してしまった私に、柿田さんは微笑む。「大丈夫です。反対側も同じようにすればいい。失敗というのはないんです。全部、その面の味になりますから」

同じ型から作られた面でも、眉の位置や線の太さが少し違うだけで、表情は変わる。一本の線が、面に個性を与えていくのだ。

柿田さんは、父・勝郎さんから面作りを受け継いだ。夜通し作業をして「これでいい」と思っても、翌朝見ると、また直したくなるという。

「満足したら終わりなのかもしれません。面が満足させてくれないんですよ。『もっとこうやれ』って」

受け継ぐことは、昔とまったく同じものを作り続けることでもない。使う人の声を聞き、時代に合わせて少しずつ変わる。残すものと、変えるもの。その積み重ねが、今の神楽面につながっている。

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教えてくださったのは…

柿田勝郎面工房・代表 柿田兼志さん

島根県浜田市出身。子供の頃から神楽に親しみ、自身も舞い手を経験。高校で甲子園に出場し、社会人野球でも活躍した。現役引退後に帰郷し、父の仕事を継ぐ。石見神楽を「ふるさとの音」と語り、面を通じて神楽や石州和紙の魅力を伝える。

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期間:奇数月(11・1・3・5・7・9月)の第2・4土曜開催
開催時間・場所:界 出雲、チェックイン日の14時〜17時(13時30分のアーリーチェックインでの案内)
料金:1人1万5000円(税込み、宿泊費別)
定員:1日3組(1〜6人)

※14日前までに「界 出雲」ホームページで予約

文/のかたあきこ 撮影/木下清隆・星野リゾート

【手わざの日本旅】第4回 界 出雲 石見神楽の守り人と学ぶ、神楽面の絵付け体験(2)<島根・出雲ひのみさき温泉>へ続く


界 出雲
住所:島根県出雲市大社町日御碕604
TEL:050-3134-8092(界予約センター)
交通:JR山陰本線出雲市駅からバス約1時間、日御碕灯台下車徒歩約3分/山陰道出雲ICから約30分/出雲空港から車で約40分
公式サイトは👉こちら

※記載内容はすべて掲載時のデータです。

(出典:「旅行読売」2026年12月号)
(Web掲載:2026年11月2日)


Writer

のかたあきこ さん

旅ジャーナリスト・編集者。町、人、温泉、宿をテーマに30年以上、全国を取材。テレビ東京「ソロモン流」で「旅の賢人」と紹介される。宿本・旅美人SPECIAL編集長、温泉ソムリエアンバサダー、銭湯検定1級、日本茶インストラクター、健康マスター普及認定講師、サウナ・スパプロフェッショナル、日本エコツーリズム協会会員。福岡県出身(福岡検定・上級)。著書に『手わざの日本旅 星野リゾート温泉旅館「界」の楽しみ方』、『温泉街リノベーション 公民連携&星野リゾートで挑む「オソト天国」長門湯本温泉の10年』(ともに旅行読売出版社)。

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