【手わざの日本旅】第4回 界 出雲 石見神楽の守り人と学ぶ、神楽面の絵付け体験(2)<島根・出雲ひのみさき温泉>
夕食は先付け、八寸やお造りを盛り込んだ「宝楽盛り」、台の物など。日本酒とのペアリングも堪能
面をつけると、人が変わる
【手わざの日本旅】第4回 界 出雲 石見神楽の守り人と学ぶ、神楽面の絵付け体験(1)<島根・出雲ひのみさき温泉>から続く
夕食後、館内で行われる「ご当地楽(がく)」へ。披露されるのは、石見神楽の「国譲り」である。
昼間、柿田さんから面作りを教わったことで、私の目は自然と舞い手の顔へ向かった。
あの和紙の面をつけている。内側には空間があり、息がしやすい。視野を確保するための工夫もされている。そして衣装の刺繍(ししゅう)の下にも、石州和紙が使われている。昼間に聞いた話が、目の前の舞と一つずつつながっていく。
柿田さんは、舞い手について興味深いことを教えてくれた。恵比寿を舞う人は面の中でも笑い、鬼を舞う人は面を外しても鬼のような表情をしているという。「もう、その役になりきっているんですよね」
この日、神楽面の絵付けを一緒に体験した界のご当地楽担当の最上(もがみ)雄策さんも、「面をつけると、人格が変わるような感覚がある。面に絵を描くというより、命を吹き込む作業だと感じました」と話す。
そして界 出雲の藤永聖子(しょうこ)総支配人も、開業時に初代の大国主命役としてご当地楽の神楽を舞った一人である。「面をつけることによって、自分自身に神様が舞い降りてくるような感覚がありました」
作り手、舞い手、そして自ら舞った経験を持つ総支配人。立場の違う3人の話を聞いていると、面は単に顔を隠す道具ではないことが見えてくる。
その一枚をつけることで、人は物語の中の存在へと変わっていく。だからこそ、神楽面は神聖なものなのだと思える。
ご当地楽「石見神楽」
篝火(かがりび)がたかれた広場でスタッフが石見神楽を披露。華やかな衣装をまとい、柿田勝郎面工房が手がけた石州和紙の面をつけ、ダイナミックに舞う。演目は出雲大社の起源を描く神話「国譲り」。大国主命の息子と高天原からの使いが、国をかけて戦う物語。


開催期間:通年
開催時間:21時30分〜( 所要時間20分)
場所:ご当地楽広場
料金:無料
神楽の宿から、出雲の旅へ
ご当地楽の前には、「神話いろは」という館内講座が行われる。イザナギとイザナミの国生み、スサノオのヤマタノオロチ退治、大国主命の国造り、国譲りへと続く物語にも触れることができた。
界 出雲の温泉は、塩分を多く含む個性あるナトリウムー塩化物強塩温泉。宿では、出雲に伝わる「潮汲(く)み」や「湯垢離(ゆごり)」の文化になぞらえ、参拝前に心身を整える「みそぎ風呂」として提案している。
大浴場には、源泉かけ流しのぬる湯、あつ湯があり、海を望む露天風呂には寝湯もある。日本海を眺めながら湯につかり、翌日は出雲大社へ。

日本海を一望する、海と空に溶け込むような露天風呂

地域の手仕事を取り入れた「ご当地部屋」。窓の向こうは日本海

明け方の「彼は誰時」にちなむ「かわたれテラス」。昇る朝日と、表情を変える海と空を眺める
この旅の始まりは、宿に到着して手に取った一枚の神楽面だった。そこから石州和紙を知り、職人の仕事を知り、神楽を知り、神話へと興味が広がった。
宿で知ったことを手がかりに、今度はその舞台となった土地を歩いてみたくなる。日御碕から、出雲の神話をたどる旅が続いていくのだ。
「界」で温泉文化を学ぶ
温泉文化いろは「出雲の地で心身清める湯垢離体験」
界 出雲の湯守が、紙芝居を使って温泉の泉質やおすすめの入浴法を紹介。さらに、稲佐の浜の海水で清める「潮汲み」や、参拝前に温泉や水で心身を清める「湯垢離」など、出雲に伝わる風習もひもとく。温泉につかり、心身を整えて出雲の古社へ。


開催期間:通年。チェックイン当日16時〜、17時〜、所要20分、湯上がり処
料金:無料
定員:各回最大8人
予約:要予約
※参加者には1グループに1冊「お湯印帳」を進呈。源泉にホワイトセージのアロマオイルを加えたオリジナルアロマスプレーも用意される
「神話いろは」
紙芝居を見ながら、イザナギとイザナミの国生み、スサノオのヤマタノオロチ退治、大国主命の国造りなど、出雲につながる神話を楽しく解説。最後は「国譲り」へ。物語の続きは、夜のご当地楽「石見神楽」で楽しむ。

開催期間:通年。チェックイン当日16時30分〜、所要20分、かわたれテラス
料金:無料
Pickup!
御朱印大好きスタッフ!藤永聖子さん
旅先で訪れた神社の荘厳さに感動して御朱印巡りを始め、全国100社以上の神社へ。2025年に界 出雲の総支配人に着任後は、神々を身近に感じる風土や伝統の神楽など、出雲ならではの文化に魅了されている。10年間、美容師として着付けやブライダルなどを経験後、「おもてなしを極めたい」と星野リゾートへ。美容師時代からの「人を笑顔にする」思いを、宿づくりにも生かしている。


文/のかたあきこ 撮影/木下清隆・星野リゾート
界 出雲
住所:島根県出雲市大社町日御碕604
TEL:050-3134-8092(界予約センター)
交通:JR山陰本線出雲市駅からバス約1時間、日御碕灯台下車徒歩約3分/山陰道出雲ICから約30分/出雲空港から車で約40分
公式サイトは👉こちら
※記載内容はすべて掲載時のデータです。
(出典:「旅行読売」2026年12月号)
(Web掲載:2026年11月2日)


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